大島地区で行われている子牛競り市。平均価格が持ち直している中、今回の牛肉表示不正の影響を不安視する声が出ている(資料写真)
牛の種類や産地を偽装して牛肉を販売したなどとして農林水産省は、指宿市の食肉販売会社・水迫畜産に対し、食品表示法と牛トレーサビリティ法に基づく是正指示や勧告を行ったが、同社は奄美群島で開催されている子牛競りに来場、購買者として長年購入している。幅広く購入し頭数も多いことから、肉用牛生産農家からは競りへの影響を懸念する不安の声が出ている。
大島地区では二か月に1回、奇数月(1、3、5、7、9、11)の年6回、子牛競りが行われている。今年も1月と3月の競りが終了した。
与論市場を皮切りに沖永良部、徳之島、奄美大島、喜界と各市場を北上。県内の肥育農家のほか、県外からの来場もあり、1月競りでは年末の購買者誘致活動により、徳之島では関西からの新規来場があった。関係者によると、水迫畜産は古くから大島地区の競りに来場。与論から喜界まで全ての市場で購買しており、平均価格の上下を含めて幅広く買い、頭数も多いという。
奄美大島の肉用牛農家(64)は、「3月競りが終ったばかりだが、奄美大島市場では1回あたり200頭の入場があり、(水迫畜産は)高値をつけていた。先代の代表者の頃から奄美の子牛を購入してもらっており、ラジオでニュースを聞いて驚いた。偽装は良くないが、生産者にとっては影響が大きい」と語り、「次の競りが心配。下落が続いていた競り値もようやく持ち直し、高騰している飼料代に追いついてきた矢先だけに、今後を考えるととても不安。経営を維持し、これまで通り購買してもらえるだろうか」と吐露した。
鹿児島県は全国和牛能力共進会(全共)で2連覇し、県は「和牛日本一」を掲げ、新年度当初予算でも和牛日本一鹿児島プロジェクト(4600万円)を計上。県産和牛の認知度向上による販路拡大を図るため、首都圏の高級ホテルレストランなどでのフェア開催のほか、新たにインフルエンサーや情報誌も活用した情報発信を計画している。また、応援店の拡大を通じて、県産和牛の認知度向上と消費拡大を図るため、応援店での商品の割引や広告宣伝などの集客にかかわる経費を支援する。
こうした取り組みを打ち出している中、大島地区の市場関係者は「今回の問題により県産黒毛和牛への風評被害が懸念される」とする。子牛競りへの影響については「牛の肥育頭数は変わらないのではないか。来場しての購買がなくなることはないだろう。繁殖農家の皆さんは引き続き発育、血統、肉質に留意して商品性の高い子牛づくりに努めていただきたい」と呼びかける。
農水省の発表によると、水迫畜産は、牛肉の牛種について黒毛和牛以外にも肉専用種、交雑種またはホルスタイン種の原料牛肉を商品の一部または全部として使用していたにもかかわらず「黒毛和牛」と表示。牛肉の原産地については、鹿児島県産以外にも沖縄県産、または宮崎県産の原料牛肉を商品に使用していたのに「鹿児島県産」と表示していた。また、特定牛肉(枝肉・部分肉・精肉)に事実と異なる個体識別番号を表示。こうした行為で、ふるさと納税返礼品または消費者向けとして販売したことを確認したとしている。

