奄美の方言、AI動画で

収録に臨む重野さん(左)と鈴木会長(奄美市名瀬小宿にある鈴木会長宅で)


リップシンクの技術で生成されたAI動画(ユーチューブより)

島口継承・活用へ
住民語り手に研究者が発信
「若者が触れる場に」

 全国的に方言が消えつつあるなか、奄美群島独自の方言である「島口」の継承・活用に向けた新たな試みが、奄美市を皮切りに始まった。集落住民が語り手となって朗読した音声を生成AI(人工知能)で編集し、動画にして公開。発信を始めた研究者は「文化を残すだけでなく、若者が島口に触れる場になれば」と期待する。

 「むかーし、りゅうーぐーぬおひめさまが、うぶさ、やだんちゃんなー(昔、龍宮のお姫様が重病になったそうな)」

 公開された動画「カメとヒラメ」(試作版)の冒頭の場面。日本学術振興会所属で広島大学特別研究員の重野裕美さんと、夫で広島大学准教授の白田理人さんが発案し、発信した。

 龍郷町出身の重野さんは、大学の卒業論文で島口を扱って以降、20年以上にわたり奄美語や琉球諸語の調査研究に取り組んできた。日常生活で島口に触れる機会が減る中、島や集落ごとに異なる発音や語彙(ごい)を、正確に記録・保存していこうと活動を開始。誰でも研究に向き合える一次資料として公開したほか、先々は方言教材として活用する狙いもある。

 19日に行われた収録では、島口継承に取り組む「シマユムタを伝える会」の鈴木るり子会長が語り手を務めた。宇検村生勝集落出身の鈴木会長が幼い頃に母から読み聞かされた「テキバナシ」と呼ばれる民謡を再構成し、生勝の方言で朗読。収録を終えた鈴木会長は「民話には地域の文化や暮らしの知恵が凝縮されている。動画をきっかけに島口を使う人が増えれば」と願った。

 映像制作では、鈴木会長の写真を生成AIでイラスト化し、録音した音源に合わせて人物の口の動きを同期させる「リップシンク」の技術を使って動画を生成した。映像には、方言と現代語訳の両方を字幕化。完成した動画を動画共有サイト「ユーチューブ」に投稿し、「奄美言語文化研究会」のチャンネル名で発信した。

 方言研究について重野さんは「人間の在り方を教わり、島の暮らしを追体験する活動だ」と述べ、動画は「社会還元の一環。地域コミュニティーと協働していくことで、多様な島口を発信していきたい」と思いを込めた。白田さんは「実際にしゃべる資料。今後は民話に限らず、地域の人が自然にしゃべる姿も集めたい」と強調。「将来的には(AIが学習を繰り返すことで)自動翻訳、自動対話ができるレベルに高めていきたい」と意気込んだ。

 活動は今後、奄美群島各地で行う予定で、2人は方言を話してくれる住民の協力者を募集している。問い合わせは、Eメールamami.gengo.bunka@gmail.comへ。