懇話会では、開業医の高齢化・廃業問題、専門職の人材確保について意見が交わされた(18日、奄美市役所)
奄美市域の持続可能な医療の在り方について議論する「第3回奄美市医療懇話会」(座長・安田壮平奄美市長)が18日夜、奄美市役所であった。委員となっている市内の開業医・勤務医9人と、進行を補佐する名瀬保健所の相星壮吾所長(医師)がテーブルを囲み協議した。事務局(市保健福祉部健康増進課)は、2月に実施した開業医・勤務医別のアンケート結果と傾向を示し、今後協議すべき課題を浮き彫りにした。
同懇話会は、経営者の高齢化などの理由で閉院が相次ぐ市域の医療不安を解消する目的で、25年4月に設置。10月に行われた第1回会合で、医師10人が委員に委嘱された。
開業医アンケートは、21の病院・診療所を対象に実施。15人から回答(回答率71・4%)があった。回答者の69・2%が60歳代以上で、他の回答者の年齢構成から「今後10年間で市の開業医の9割以上が60歳以上となる」見込みと分析された。
事業承継については、「後継者候補がいる」と答えたのは20・6%にとどまり、診療所機能の維持が難しくなっていることが改めて浮き彫りになった。
開業医の一人は「経営状態は厳しさを増している。息子には継がせたくない」と心情を吐露。別の開業医は、「奄美大島には四つの大病院がある。看護師が移ってしまうことも課題」と話した。固定資産税減免の措置を望む声も上がった。
名瀬徳洲会病院の平島修副院長は「開業医が減り続けると、患者の足の問題(通院手段)が出てくる。〝集合クリニック〟のようなものを考えないと立ち行かなくなる」と懸念を示した。
県立大島病院の森田喜紀総合診療科部長は、「国は、公立病院に急性期機能の集約化を求めているが、(開業医の閉院が続けば)医療の空白化が生じかねない。当院や名瀬徳洲会病院が外来機能を維持することが必要」と柔軟な運用を訴えた。
大島郡医師会の稲源一郎会長からは「エリアごと(以前の会合では中学校区ごと)に診療所は必要。行政が必要量を示すことができれば課題が明確になる」といった趣旨の発言もあった。
同医師会は、地域包括ケアシステム(医療・精神医療・介護・福祉の連携)構築へ向けた準備を進めている。稲会長は「医療側は、〝地域医療連携推進法人〟を組織することで、医師・看護師・ヘルパーといった人材を融通し合うことができる」と発言した。
県病院の森田医師は「現在、公立病院から民間への医師派遣はできないが、医療連携法人の枠組みができれば可能性は高まる」と応じた。
奄美看護福祉専門学校の看護学科入学者が減少傾向にあることについての意見も相次いだ。
笠利国保診療所の橋口真征院長は「現在の奨学金制度(地域や特定の病院への就職を条件にした返済免除型)では、入学者は増えない。給付型・生活支援型の制度創設が必要」と提案。ほかの委員からは、社会人への情報発信を望む声も上がった。
勤務医対象のアンケート(72人が回答)では、島外からの人材誘致について「島の生活をイメージできる情報発信が重要」とする意見が多数を占めた。
安田市長は「人材確保に向け、市として何ができるか勉強していく。次年度の懇話会では、直近の課題、長期的課題について解決への方向性や具体策を示したい」と話した。
同懇話会は26年度も継続、年3回の会合を予定している。
集合クリニック…複数の診療科が1つのビルなどに集積した施設。
地域医療連携推進法人…医師の派遣、病床の融通などを連携して行う非営利組織。厚生労働省が地域医療構想の実現を目指し推奨している。

