中学校の授業の教材用を出発点に戦争体験、「集団自決」の証言を掘り起こし伝えている津田憲一さん(19日、奄美新聞社)
『座間味旅日記』と『加計呂麻旅日記』の表紙
18日にあった奄美郷土研究会例会で瀬戸内町加計呂麻島の住民証言、文献記録から太平洋戦争末期、奄美でも「集団自決」計画があったことを掘り起こした神奈川県大和市の元中学校教員・津田憲一さん(72)。戦争体験語り部の「伝え部」として調査を重ねており、作成した証言集を分かりやすい「旅日記」としているのは社会科授業の教材用が出発点だった。
2008年10月作成の『座間味旅日記―「集団自決」の現場を訪ねて―』。沖縄県慶良間(けらま)諸島の一つである座間味(ざまみ)島は那覇市の泊港からフェリーで行ける。
津田さんの沖縄行きの動機をつくったのが『証言 沖縄「集団自決」―慶良間諸島で何が起きたか』(謝花直美さん著 岩波新書)という1冊の本。背中を押したのが、「あとがき」のこの文章という。「体験者に対して、私たちができることはまっすぐに向きあい、一つひとつの言葉を受け止め、きちんと伝えていくことだ。それが、魂の底から震えるようにして、思い出したくなかった体験を話してくれた人々に対して応える、たった一つの方法だと思っている」。現地で10人の戦争体験者から聞き取ったが、証言をまとめ授業で活用の教材にするにあたって留意したのが「生徒に読んでもらえる工夫」だ。
「同僚の教員のアドバイスもあり文字だけでなく証言者の写真も添え(語り部と内容が結び付く)、旅日記風にした。証言の部分は本文で区別するため話言葉で伝えた。読みやすく、分かりやすくなったことで、子どもたちがページをめくってくれた」。座間味だけでなく、奄美でも旧日本軍による住民の「集団自決」が計画されていたという埋もれた事実を浮き彫りにしたが、発行された著書『奄美“幻”の「集団自決」』(南方新社)も教材用として作成した『加計呂麻旅日記』に基づいたもの。
津田さんは「例会では講演後、戦争実体験がある聴講者から、親との話で『いざという時は死ぬ覚悟だった』という発言が寄せられた。奄美大島の北部に住まわれている方で、まさに自決を示すもの。旧日本軍が駐留していた地域でこうした話が住民から出てくるのは当然であり、加計呂麻島以外の地域、引き続き鹿児島県内で調査していきたい。集団自決の仕掛け人が旧日本軍であったのは明らかだと思う」と語る。
戦争は過去のものではない。ロシアによるウクライナ侵攻、米軍・イスラエルによるイラン攻撃、そして台湾有事を想定し南西諸島ではミサイル配備を含む自衛隊施設の整備が進められている。津田さんは「武力攻撃などへの備えとして国民保護計画が示されているが、国民一人一人の命を守る計画でなければならない。国家が国民に対し、生きることを許さないような歴史を繰り返してはならない」と訴え、「戦争時に何が起きたか客観的な事実を私は伝えていきたい。正確に知ってもらい、その解釈は読み手(聞き手)に任せたい。名もなき民衆が、どんな思いで当時死んでいったのか。生き延びた人の生の証言を集め、証言すら残せなかった人の思いや無念さに、精いっぱいの想像力と共感力を働かせながら、少しでも近づきたい。二度と戦争が起きないよう受け継いでいきたい」と気持ちを込めた。

