インタビューに答える有村忠洋氏(奄美市名瀬塩浜町の名瀬港運本社で)
鹿児島県内の企業の景況感については行政機関や金融機関系のシンクタンクなどから調査結果が発表されている。外海離島の奄美の場合、さまざまな条件不利性があり、企業経営も県本土と乖離した部分がある。そんな実態に迫ろうと2025年度から始まったのが、奄美大島の商工5団体(あまみ商工会、龍郷町商工会、瀬戸内町商工会、宇検村商工会、奄美大島商工会議所)による管内中小企業・小規模企業者を対象とした景況感調査だ。これまでの状況では経営悪化企業が増加傾向にある中、日々の業務に工夫を重ねている経営者代表や関係団体代表に地域経済の現状、そこから見える行政に求めたい施策・提案などを語ってもらう。名瀬港運㈱代表取締役社長で、奄美群島内の企業経営者らで構成する公益社団法人奄美大島法人会会長の有村忠洋氏(62)にインタビューした。
―離島の場合、輸送コストの上乗せで本土以上に深刻な物価高、さらに中東情勢の緊迫化で原油高が重くのしかかる。現状だけでなく先行きも不透明さを増している。景況感をどう分析しているか。
「現在の混沌とした国際情勢、誰も予測不可能な状況に陥っている。不安定さ、原油高をはじめとした物価高、そして企業経営にも直結する『金利ある世界』。奄美の個々の企業はどう対処していくか、まさに悩みどころではないか」「地域経済から考えてみたい。人やモノの動きから考察すると奄美の場合、新型コロナ禍前の段階(2019年当時)まで回復していない。ターミナルビルなどが増改築された奄美空港も利用する乗客はまだ十分には戻っておらず、世界自然遺産登録で期待されたインバウンド(訪日外国人客)の受け入れが課題となっている。海の世界も同様。クルーズ船の名瀬港への寄港は増えつつあるが、国内の他の地域に比べるとコロナ禍以前まで戻っていない。人口減少の加速で消費量が減少しているのだろう。船舶で取り扱う貨物の量でも回復が見通せないことが実感できる。冠婚葬祭など生活様式がコロナによって変化し、それが現在も続いていることも影響している。先代(前社長)の言葉が常に脳裏に浮かぶ。『本土の経済が悪くなると奄美もすぐに悪化する。本土が回復しても奄美は戻るのが遅い。それが島経済の体質』」
―専門である海運から見て国際、国内経済の見通しは。
「ホルムズ海峡の封鎖という事態から改めて『海運自由の原則』(公海自由、航行の自由)の大切さを痛感している。これによって世界貿易は伸び、戦後日本も貿易立国を目指し成長を続けてきたのだから。また、海の保険とも呼ぶことができる制度に『共同海損』がある。事故などの遭遇時、損害を利害関係者で負担し合うもの。国際協調を示すものだが、こうした自由やルールも一部の強国や大国によって踏みにじられている」「やはり日本の産業は、医療や農業などを含めて平和を前提にした産業。人やモノの移動が自由であってこそ富を生み出し成長する。現在の対立・紛争(戦争)が早く落ち着くというのが根本だが、そのための解決策としてはやはり多くの国々が協力して取り組むという外交ではないか。対話を重ねて国際平和を取り戻してもらいたい。我々にできることは現状を冷静に見て判断していくことだ。政府をはじめとした行政の対応など情報も正確に把握したい。心理的な不安も、さまざまな情報を入手することで上手にコントロールすることができると思う」
―移動に関して離島は、交通の安定が鍵を握る。路線の減便や運休は観光業だけでなく暮らし、島民の生活そのものを大きく左右している。
「離島からの移動の場合、船と飛行機しかない。時間面の高速移動と大量移動を考えると、この二つの交通機関を持っているのは強みと言えないか。二つの交通機関によって生み出される路線を将来にわたって維持するとともに強化しなければならない。特にJAC(日本エアコミューター)は奄美群島で生まれた航空会社であり、その役割をもう一度原点に戻って考える時期に来ているのではないか。コロナ禍前に始まった取り組みである群島間の航空ネットワーク『アイランドホッピング』は、各島間で乗り継ぎが行われている。この乗り継ぎやダイヤが現状に即しているのだろうか」
―確かに奄美大島から沖縄への移動に関して乗り継ぎの不便さに直面している。改正された奄振法(奄美群島振興開発特別措置法)により沖縄との交流連携強化が打ち出され、それに伴い航空路の運賃軽減も拡充された。しかし以前のような直行便路線ではないため、「割引されても利用しにくい」という声を聞く。奄美空港の「ハブ空港化(乗り換え拠点)」を提唱している。どのような路線の在り方を求めるか。
「まず群島間の路線について考えていきたい」
(つづく)

