奄美産を中心とした自然素材を使い完成させた大山さんの「クラフトコーラ」。生産・加工・販売の6次産業化へ会社を立ち上げ創業した
住用町にある公設の加工施設で商品づくりに取り組んでいる(提供写真)
奄美市名瀬出身で昨年12月、茨城県からUターンした男性が会社を立ち上げ、自然素材(奄美産中心)を原料にした手作りの「クラフトコーラ(コーラシロップ)」製造・販売に取り組んでいる。島内の生産者から原料を仕入れるだけでなく遊休地(耕作放棄地)を再生させようと生産にも取り組んでおり、加工から販売まで6次産業化の実践を通し島内循環型の仕組みづくりを目指している。
大山和輝さん(25)。中学まで地元で過ごし、熊本の高校、京都の大学を経て茨城県水戸市に本社がある大手自動車会社に就職。トラックなどを製造する企業だが、新規事業として県内に特化した転職支援の事業所を発足させたことから、大山さんはこの事業に関わった。
事業所での仕事の傍ら、副業としてコロナ禍以降にブームになり連盟(2023年)ができるなど活況を呈していたクラフトコーラに着目。実際に自分で作ったり、関連したイベントを企画した。市販品が人工甘味料や人工香料などを使い工場で大量生産するのに対し、自然素材を原料にする。大山さんは「奄美で生産されたものを使えば、古里の振興に役立つのではないか」と考えた。
「奄美に戻って起業しようと20歳の頃から決めていた。そのための方策を種子として持って帰りたい」。種子がクラフトコーラであり、古里で進めるにあたって大山さんが視線を向けたのが農業だ。
「使われていない農地がたくさんある。農家の皆さんも高齢化している。どうにかしたいが、若い人は農業について『作業がたいへん』『稼げない』とイメージする。これを変えたい。クラフトコーラづくりによって。これが全てではなく一つの手段だが、島で生産された作物をそのまま出荷するだけでなく、加工によって付加価値をつけ商品にしていきたい。島内での販売により循環できる仕組みを創出できれば」
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生産・加工・販売までの一環化へ創業。「ちゃんと続く未来を、つくる。」を掲げ、法人名を「TUNAGU(つなぐ)」とした。「人と人をつなぐ、奄美の歴史を未来へつなぐ」という思いを込めた。清涼飲料水の製造許可取得後、製造・販売に取り組んだのは今年3月から。
住用町にある市の加工施設を利用して奄美産のクラフトコーラを製造。原料として仕入れているのは黒糖(土づくり等にこだわりを持ち少量生産している瀬戸内町篠川の個人事業主から)、タンカン、レモン、ショウガ、ウコン、シナモンスティック、食塩(笠利町打田原産)、そして地元住用の水だ。大山さんは「原料を仕入れるにあたっては定年退職するまで市役所に長年勤務した父親の人脈が生きた。感謝しかない」と振り返る。原料のうち「そもそも日本では生産が難しい」とされているシナモンスティック(海外産)のみ地元産外だ。「世界自然遺産の島での商品づくりであり、環境にやさしいを打ち出したい。そのためにもできるだけ薬剤や化学肥料を使わず、しかも奄美産にこだわりたい。コーラ風味のために欠かせないシナモンも将来的には奄美で生産できたらと考えている」
原料の作物を切断後に鍋に投入、沸騰させて煮込みエキスを抽出、搾りかすをこすとシロップ状になったものが出来上がり、熱湯殺菌した瓶に入れて商品が完成する。そのままではなく割って飲むもので、通常のコーラのように炭酸で割るだけでなく黒糖焼酎に入れたり、奄美で親しまれているミキやヨーグルト、ショウガが入っていることから風味がより強くなるというお湯割り(ホットコーラ)もお薦めだ。
「大人から子どもまで『家族全員で飲めるコーラ』をコンセプトにしている。しかも自然素材で糖分も地元の黒糖を使用。素材本来の味わいを大切にした」商品は、4杯分ぐらいは飲めるという100㍉㍑サイズ(税込み1250円)、300㍉㍑(約12杯分同3500円)、500㍉㍑(約20杯分同5000円)の3種類。原料や奄美の風景をデザインし好きなラベルを選べるようにしたお土産用も準備しており、市内のセレクトショップや飲食店などに卸している。販売後の瓶も回収し再利用していく。
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「まだまだこれからの段階。商品に対する声などに基づいて改善しながら着実に成長していきたい」という大山さんは、原料を仕入れるだけでなく自ら生産にも挑戦中だ。住用町の川内集落で農地(約20㌃)を借りて、シマショウガと白ウコンなど3種類のウコンを栽培中。商品づくりで排出される搾りかすを堆肥(たいひ)化して農地に還元しており、これも循環型になる。「農業は全くの未経験。父親とのつながりなどから紹介してもらった先輩方からアドバイスを受けながら、なんとか無事に植え付けることができた。シマショウガは在来種だけに、ちゃんと育て収穫できるようにしていきた」と大山さん。
生産によって原料を安定的に入手できるが、こうした原料の加工品化の利点を大山さんは挙げる。外観や内容品質(糖度など)の基準内でなければ出荷できない、あるいは出荷できても安値で買い付けられる規格外品の活用だ。「傷がついている、またはサイズが小さい。見た目は悪くても味はおいしい。こうした作物は加工品なら十分に使える。出荷できず売り上げにならなかった作物を買い取り、農家の皆さんに貢献できたら」
「帰ってきたくなるような島にしたい」という思いから始めた起業。原料生産、仕入れ、加工品づくり、販売と多様な職種が生み出されるという理由から製造業に踏み出した。「今は理想を追いかけているかもしれない。でもその先に、きっといい未来があると信じて軌道に乗せたい」。大山さんは語った。

