2025年度奄美大島中小企業・小規模企業者の景況感等調査報告書から
「価格転嫁できない」「人が足りない」構造的課題
奄美大島の商工5団体(あまみ商工会、龍郷町商工会、瀬戸内町商工会、宇検村商工会、奄美大島商工会議所)は2025年度から管内中小・小規模企業者の景況感等調査を四半期ごと(3か月に1回)に行ったが、4回に及ぶ年間調査結果を報告書としてまとめた。観光需要に左右されることから「夏場の特需と冬場の落ち込みが激しい『ジェットコースター型』の1年」と総括。「物価高でも価格転嫁できない」「人が足りない」を変動の根底とし、構造的課題として挙げている。
調査は4~6月期(第1回)、7~9月期(第2回)、10~12月期(第3回)、1~3月期(第4回)の4回にわたって行い、結果は各商工団体のホームページで公表した。年度合計の業種別回答総数は736件に及び、小売業(149件)の回答数が最も多かった。
年度まとめの景況感は、過半数が「横ばい」を維持したものの、「季節要因に大きく振り回された1年だった」と分析。夏場は帰省・観光需要により大きく改善したが、冬場にかけて閑散期入りと同時に急速に悪化。横たわった構造的課題により、「企業の資金繰りを圧迫し続けている」と指摘。一方で、デジタル化の推進に取り組む企業や島外展開に挑む企業も見受けられたという。
設問別の年間データ推移まとめ(重点分析)をみると、▽経営状況=第2回(7~9月期)は帰省・観光客の増加により悪化割合が大幅に減少し、業況が急回復。しかし、第3回以降は冬場の閑散期入りと島内消費の冷え込みにより再び悪化に転じ、第4回では「悪い」が年間ワーストの32・2%を記録。「観光特需への依存と閑散期のもろさが浮き彫りになっている」▽資金繰り=年間を通じて3~4割弱の企業がキャッシュ不足に苦しんでいる。特に年末にかけてとなる第3回はワーストの38・8%に達しており、物価高騰によるコスト負担が利益を削り、「手元資金を圧迫し続ける構造が慢性化している」▽デジタル化=年間を通して「進めている」企業と「何もしていない・分からない」企業がほぼ半々で推移し、完全な二極化が固定化。「『AI(人工知能)化が最重要テーマ』と見据える先進企業がある一方で、取り残される層へのボトムアップ支援が急務」▽雇用状況=人がいないだけでなく「会社負担の社会保険料が重い」「雇いたいが資金的余裕がない」といった、採用活動自体に資金を回せない「負のスパイラル」が発生しており、「個社の努力だけでは解決不可能な領域に達している」▽価格転嫁=依然として3割強の企業が「転嫁できていない」状態で高止まり。「島民の給料が上がらなければ値上げできない」という声に象徴されるように、「島内消費の弱さが値上げのストッパーとなっている」
自由記述から見える奄美大島特有のテーマとして、①外部環境(新施設・万博)への警戒(「市内の新築ホテル出現で影響をこうむる」など限られたパイの奪い合いと価格競争への危機感の強まり)②原油高は、「輸送費・フェリー代」の増大として本土以上に重くのしかかる③島外展開(沖縄・外貨獲得)への挑戦(縮小する島内需要を見限り、「夏に向けて春から沖縄営業に動き出す」「共同で進出できればコストも分散できる」と、外貨獲得に向けた動き)――の三つを示している。

