前提は防風対策

作成された『奄美地域における防風樹の手引き(改訂版)』の表紙と掲載している自然の防風帯の中に開園し、防風垣で区切った果樹園

農作物栽培実践で「経営成り立つ」
防風樹手引き改訂版作成

 台風6号による農作物被害では、生産者にとって特に打撃となったのが収穫期に入っていた果樹二品目だ。パッションフルーツとスモモの果実の落下によって出荷できず、販売によって得られる収入に影響。落果量が多いほど甚大な被害となった。全ての農作物栽培で「防風対策が必要不可欠」として今年3月、『奄美地域における防風樹の手引き(改訂版)』を作成した県園芸振興協議会大島支部などの関係機関は、「風対策をしっかりとやってこそ経営は成り立つ」として防風対策を前提にした営農を改めて求めている。

 県や市町村、JAの技術指導員で構成する園振協大島支部果樹技術部会が台風接近前の5月29日、かんきつの事前対策として挙げたのがこの三つ。①防風樹や防風施設の点検・整備を行う②幼木や若木は倒伏しやすいので、支柱を立てハウスバンド等で枝を支柱に誘引する。台風通過後にはできるだけ早くバンドを外すこと(蒸れて枝や葉がだめになる)③台風襲来3日前には、かいよう病対策として殺菌剤を散布する。

 農村地域の名瀬古見方地区などで施設でのパッションフルーツ栽培が盛んな奄美市は、資材高騰・不足の中で強風によりハウスの骨組みが倒壊したりビニールが破損すると経営へのダメージが大きいとしてビニールを取り除くことを呼び掛けた。これにより野ざらしとなった果実の中には落下するものもあったが、パッションは元々露地で栽培されていた品目だ。「栽培に取り組むにあたって防風樹の選定を含めて、風対策を十分に施せば防げたのではないか」との見方が出ている。

 生産者が集う場を捉えて2025年度、4~5回にわたり防風対策の重要性を訴えたのが奄美大島選果場管理運営協議会フルーツブランド確立推進員の熊本修さん。防風垣・防風林の必要性について重点支援農家(26年度は60人選出)に昨年9月アンケートしたところ、ほぼ100%が必要と回答した。ところが植え付けない農家が存在する。「最近大きな台風が来ない」「果樹園を有効に使いたくて、少しでも多くの苗木を植えたい(密植栽培)」などが考えられるという。

 作成された手引きでは、防風樹の推薦樹種でアデク、有望樹種としてイヌマキなどを選定するとともに、畑地や樹園地における防風帯、防風垣の作り方も提示している。イタジイなど自然に自生する樹木利用の防風帯と育成した防風樹の利用で二重の対応が可能となり、利点として品質安定や規模拡大が容易、作業効率等を考慮した計画的造成などを手引きでは挙げている。かんきつで推奨する防風垣と植栽間隔(1区画面積20×30㍍なら防風樹からの距離4㍍、畝(うね)間5~6㍍、株間2・5~3㍍)も示しており、園の周囲だけでなく間に防風樹を植えるのも効果があるという。

 熊本さんは「今回の台風では幼木で倒れていないから大丈夫のように見えても、強風によって揺すられたことが分かる穴が周辺で確認された。JAあまみ大島事業本部果樹技術指導員の大山綱治さんなどが幼木の根を守るため、穴に土を入れる取り組みを指導した。揺すられて根が切れていたら生育の遅れを招く。幼木を植栽するにあたり、やはり防風対策を施さなければ成木に育たないし収量が見込めない。また、今回を機会に収入保険や施設共済への加入を考えていただきたい。毎年異常気象が頻発する中で、いざという時の備えは大切。掛け金が高いとして加入しない生産者が多い中、災害に遭った生産者からは保険に入っていて良かったという声も聞かれる」と話す。

 被害の抑制へ生産者一人一人に求められる手引きの活用と実践。手引きにはこんな言葉が綴られている。「少しでも多くの防風樹が植えられ、強固な防風垣設置により、災害を受けにくい農作物の栽培環境が整えられ、農家の皆様の当地域(台風常襲地帯で季節風も強い奄美地域)における持続的な営農が実現することを願います」