警察署の少年ボランティア、自分の子の友達との関わりをきっかけに困難を抱える児童生徒・親と向き合い続けている奄美市教育委員会SSWコーディネーターの福山八代美氏
親を責める大人「絶対に心開かない」
今月9日開かれた奄美市の名瀬単位民生委員児童委員協議会の定例会。この中では市教育委員会学校教育課の生徒指導担当者が不登校対策について講話した。数字が語る奄美市の現状として不登校(年間30日以上の長期欠席者数)の児童生徒数は、2024年度(131人)に初めて増加率が全国平均を下回り、25年度には100人を切り97人と減少に転じたことが報告された。しかしこの97人が「背景が非常に重い、深刻な層」として地域力の必要性を挙げた。支援者である民児委員の役割については「解決者」ではなく「つなぎ役」を指摘し、「情報をつなぐことが、孤立した家族を救う第一歩」と強調した。「つなぎ役、その誇りを胸に」と求めたが、どういう活動(行動)が「つなぐ」ことで、どういう「つなぎ」によって救いをもたらすのだろう。不登校など困難を抱えた児童生徒、保護者に対し家庭訪問などを重ねながら関わり続けている市教育委員会SSW(スクールソーシャルワーカー)コーディネーターの福山八代美=やよみ=氏(62)に、「つなぐ」「社会とのつながり」から見えてくるものを聞いた。
――とても多忙な日々を送っている。子どもたちや親に関わるようになったきっかけは。
「20年ぐらい前だったと思う。奄美警察署の少年ボランティアをしていた。『ちょっとやんちゃな子どもたち』の見守り。非行に走った子でも一人一人と関わり話をすると感じたのが、本当に悪い子はいないということ。仲間が集まっての行動であり、自分と話が合う者同士しか集まらない。背景にあり共通するのが寂しさだ。家庭に帰る場所、ご飯を食べる場所、寝る場所があれば仲間同士で集まらない。いかに孤立をさせないか。そのためにずっと関わり続けた」「私の実子(現在、里親にもなっている)は4人(男3人女1人)。友達として自分の子を通した関わりもあった。生活の困窮など、さまざまな家庭の事情を抱えた子どもたちがいた。『友達がこんなことを話していた。つらいね。悲しいよ』。友達の相談を聞いたという私の子の訴え。『そうね、つらいね』と話を聞くだけで、その頃は何もできなかった。我が家に遊びに来る子どもたちが皆かわいかっただけに、関わっていきたいという思いが強くなった」
――何とかしたいという思いが行動につながったのか。
「いや、その頃はただ話を聞くだけ。家に来たときに一緒にご飯を食べようと誘うぐらい。特別なことはしていない」
――接してみて違いを感じたことは。
「やっぱり、こう影があるような…大人には言えないという雰囲気が伝わった。私の子を通じて家庭の事情を知っていたが、そのことを私に話す、打ち明けることはなかった。この経験は今に生きている。長く関わらないといけない、すぐには話してくれない、長い支援が必要だとそのときに強く感じた」「SSWの仕事に就いたのは、警察署の少年ボランティアとして私の活動を知った当時の指導主事(市教育委員会)の声掛けから。同じように子どもたちを見守ることを継続してやってくれないか、という話だった」
――SSWの仕事について説明してほしい。
「不登校だった子が登校するようになる、問題行動が改善されるといった目に見える成果が出るものではない。地道な傾聴と環境調整の積み重ねだと思う。本人の話をじっくりと聞く。それによって家庭の困窮、孤立、学校とのミスマッチなどといった背景が見えてくる。それが切り口となって、自分たちの役割である『つなぐ』ことができるようになる」
――なぜ丁寧な傾聴が必要なのか。
「じっくり聞く。それは子だけでなく親も同じ。信頼関係が築け、必要な福祉制度や地域資源につなぐことができる。これがSSWの役割だと思っている。私たちは家庭の中に入ることができる。それにより子どもが置かれている背景、親の存在といった家庭環境を知ることができる。親への支援が可能になる」「家庭訪問で見えることがたくさんある。感じるのは子どもたちのSOSの出しにくさ。ヤングケアラー(家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者)、孤立する子どもたち…SOSを出してもらうには地道な積み重ねによって信頼関係を築くしかない。不登校も学校への行きづらさを抱えることの結果ではないか。わがまま、怠けではないことを理解したい。接する中で一番やってはいけないことが親を責めることだ」
――それは親に対してか、子どもに対してか。
「両方とも。親を責める大人に、子どもは絶対に心を開かない。支援が前進しない。『あの親の子だからよ』。内心でも思ったとしよう。子どもは必ず見抜く。このことはSSW全員に必ず話すこと。親を責めるのではなく、私たちが関わりつなぐことで家庭全体が社会から孤立することをなくさなければならない。何度も繰り返すが、そのための方法は活動の地道な積み重ねしかない」
――活動をイメージしたい。コーディネーターと通常のSSWの違いは。
「私は調整役として奄美市内の全学校を対象としている。私以外のSSWは主に一つの学校(複数校の兼務も存在)を担当している。私が全体を対象としているのは行政など各関係機関につなぐために」「親が苦しみを抱えたとき、時間に関係なく夜に電話がかかってくることもある。私だけではなく、他のSSW(福山さんまで含めると奄美市には11人存在)もそうだけど対象とする子ども、親たちに応じた活動を心掛けている。何時から何時までという決められた活動時間帯ではなく、朝7時に来てほしい、夜に会いたいとなれば希望する時間に行動することもある。やはり子どもや親に合わせた支援でないと寄り添うことにはならないのではないか」
――学校に行くというより、家庭に行くということか。
「学校に行くとしたら、担当する子どもが登校していない場合を確認し必要なら担任と一緒に家庭訪問に行く。学校や担任と常に連携している」
(つづく)

