直言 民間の視点から ■6■

活動を支えている愛車のプリウスと。子どもたちの所へ駆け付けたり、車内で話をしたり…さまざまな思い出が刻まれている

「常に声掛け、とにかく話を聞く」
専門機関へのつなぎ「長く関わる、必ず心開く」
福山八代美氏インタビュー

 ――長年重ねている関わり、つなぎ。拒まれる、難しさといった局面はなかったか。
 「現在はSSWコーディネーターのほか、主任児童委員、保護司もしている。ここまでの子どもたちとの関わりを振り返ると奄美市でも学校が荒れている時代があった。でも、やっぱり前述した通り、子ども一人一人は悪くない。少年院に行くような子どももいた。話をしたいと会いに行くと、文句を言われることもあった。でも私はこんな性格だから決して諦めない。どこででも声を掛けた。最初は会おうとしない、話もしようとしなかったが、私が繰り返し接すると相手の方が諦めた」

 ――どんな声掛けを。

 「特別なことではない。『元気かー』『ご飯食べているかー』『寝れているかー』。日常のたわいもない会話。でもこれが大事。『何かあったら相談しなさい』。こんな声掛けでは子どもたちに入ることはできない。子どもは相談しない。普段の何事もないときから関わることがとても大事だと思っている」

 ――何か問題が起きたときではなく、普段からの関わり声掛けということか。

 「そう、常に声を掛ける。そして何かあったときには、とにかく話を聞くこと。これが寄り添うでは。先日も電話がかかってきて1時間ぐらい話をした。『今は忙しいから』とは言わないように常に心掛けている」「過去にはこんなことがあった。店頭の前でバイクのエンジンをふかしている数人の中高生と無職少年の集団がいた。ものすごい音でまさに騒音だった。みんなが怖がって本当は店に行きたいのに、行くことができないのが分かった。集団を見ると知っている子どもたち。声を掛けた。『あんたたちがそこにいると怖がって、お客さんが利用できないよ』。子どもたちは素直に謝って、すぐにその場から離れた。この子たちに関わって良かったと思った瞬間だった。子どもたちは悪くない。環境が影響している。環境によって子どもたちは育つのだから」

 ――そんな環境を改善するには。

 「親支援だと思っている。家庭訪問を通して親の支援をしたい。そう、ずっと思って現在は教育委員会で取り組んでいる。ソーシャルワーカーとしていろんなことをしてきた。家の片付け、掃除なども。あまりの無頓着ぶりに驚くこともあったが、絶対に親を責めてはならないと感じている」

 ――簡単には改善しない。地道な活動の積み重ねということだが、改善につながった事例があれば。

 「小学4年生のときから不登校で、関わるようになったのは5年生からの男の子がおり、中学生まで関わった。毎朝、おにぎりを持参し車で自宅に行き、学校に行けるよう迎えた。母親は朝起床できない。寝たままだった。学校に着くまで車の中で、おにぎりを食べながらいろんな話をした。中学校卒業後、高校には行けないかなと思っていたら、高校に入学し、高校の先生方のサポートもあり卒業後には就職もできた。現在28歳だが、今もその就職先で働き続けている。SSWが担当できるのは義務教育まで。でも高校生、社会人になったら地域の人として関わることができる。そう思って、子どもたちと関わり続けている」「小学校も中学校もほぼ行っていない子もいる。学校に行くことが最終目的ではない。行けなくても、行かなくても社会とのつながりを断ち切ってはならない。子ども、親の社会とのつながりを保つ。それが私たちの活動だと思っている。丁寧に接し関わり、寄り添う。そうしたら、どの子もちゃんとした大人に育つ。これまでの経験から言えることだ」

 ――親への支援の在り方は。

 「不登校なら、自分の子が学校に行けないことに悩んでいる。『心配しなくても大丈夫よ』と声掛けをしながら話を聞いている。まずは子どものこと。それをきっかけに親自身の悩みを話すようになる。『子どもはどうしている』『元気にしている』。その程度の話でも親の心がほぐれ、家庭の悩みを打ち明ける。ここでもつなぐ立場。福祉など専門機関につないでいる。時間がとてもかかる。でも焦ってはならない。私たちの関わりで解決することは、ほぼない。長く関わっていけば必ず心を開き、そこから必要な環境調整の在り方が見えてくる」

 ――長い関わりによって鮮明になる家庭のそれぞれの悩みや問題。要因として感じるのは。

 「依存症もその一つでは。ギャンブルやアルコールへの依存が多いように感じる。そんな親でも、そうならざるを得ない背景がある。それをじっくりと聞くこと。アルコール依存の母親と関わることもあった。その際に子どもにはこう聞いた。『ママが好きだったことは何?』。子どもが話した。『ママがオムライスを作ってくれたこと』『遠足のときにお弁当に肉団子を入れてくれたこと』。とてもうれしそうにしていた」「私は言った。『そのママがあなたたちの本当のママだよ。ママは病気でこうなっている。ママの病気が治るよう、一緒に頑張ろうね』。子どもたちに親の病気を認知させ、身内には親を責めることがないよう理解を求めた。忘れてはならないのは、どんなに困難を抱えている親でも子どもから見たら一番大切な存在であるということ」

 ――皆さんの役割は非常に大事で困難を抱えた子どもや家庭の孤立を防ぎ、社会とのつながりを保っている。奄美市の現状から考えるとSSWの数はまだまだ必要だと思う。行政に求めたいことは。

 「私以外のSSWは契約職員のような状況だけに、勤務実態からの保障面を含めて待遇(報酬)をもう少し改善できないだろうか。とても難しい仕事だと思っている。簡単には成果は出ない。早朝、夜間と時間を区切ることができない相談への対応もある。仕事への誇りが持てるよう理解をいただきたい。子どもの成長を見守ることでうれしさを感じることもたくさんある。また、SSWとしての資質の向上、お互いの情報共有も大事。定期的に集まり自主研修しており、これからも継続したいし、それぞれが意見交換しやすい雰囲気を作っていきたい」

(聞き手・徳島一蔵)

インタビュー余白

 初対面とは思えないような話しやすさ。何事も隠すことなく、遠慮することなく本音で話せる雰囲気は、本人が創り出しているのではなく自然に生み出されているものだろう。それは拒まない、何でも受け入れるという包容力があるからだ。子どもたちにとっては「地域の親しみやすいみんなのお母さん」、保護者にとっては「何でも相談しやすい身内の一人」だろうか。「解決することは、ほぼない。でも関わり続けている」と明るく笑うその人柄に接すれば、安心感が希望をともしていく。