セグロウリミバエの生活史(沖縄県病害虫防除技術センター発行の防除ハンドブックより)
昨年の今頃だった。作物の出荷が自由にできなくなる移動規制を伴う緊急防除(植物防疫法に基づく)が行われ、発生地となっていた沖縄県に近いこともあり、奄美群島でセグロウリミバエの誘殺数や幼虫確認が際立っていた与論町の担当者に聞いた。家庭菜園での寄主植物の栽培で注意を促す取り組みの必要性について。
奄美市の名瀬地区など土地の問題もあるが自己消費用として野菜を自宅の庭などに植え栽培するのは、奄美大島ではあまり見かけない。手間暇かけるよりもスーパーで購入できるという意識がある。担当者は語った。「与論は台風時だけでなく、ちょっとしたしけでも定期船が欠航、あるいは抜港する。そうなると生鮮食料品などの入荷が滞り、スーパーなど小売店は商品の品切れに陥ってしまう。品切れが長期にわたることもある。毎日の食卓に必要な野菜ぐらいは自分で賄おうと家庭菜園が盛ん。自分で育てた新鮮な季節の野菜を家族で消費している」
港湾規模の関係で名瀬港には台風接近時でも直前まで定期船が接岸し、他の離島には向かわず鹿児島港に戻ることがある。大型店から個人商店まで小売店の数も多い。「食べ物がなくなる」という切迫感は奄美大島と他の離島では雲泥の差があるのではないか。船舶の欠航・抜港が多い離島にとって家庭菜園は食生活を守る知恵(工夫)かもしれない。そうした役割を認識しながらも家庭菜園で地域住民の協力が求められる事態に直面している。
調査用トラップ(わな)による誘殺でセグロウリミバエが確認された場合、国のマニュアルに基づいて初動対応が行われる。トラップを必要に応じて増設しての調査、ウリ科やナス科といった寄生する果菜類・果実類の調査、薬剤であるベイト剤や誘殺板等による防除、不要な寄主果実等の除去も国、県、市町村の関係機関は行っている。こうした対応以外で地域住民に協力をお願いしているのが家庭菜園だ。県経営技術課の発表資料には「家庭菜園など害虫防除(農薬散布)を行わない園地では、ウリ科野菜等の寄主植物の栽培を自粛するよう要請」との記載がある。
誘殺数を市町村別でみた場合、最多が続いている伊仙町の伊田正則町長は「夏野菜ではニガウリやアカウリなどの栽培時期。だが、防除できない場合、今年度は栽培しないよう町民の皆さんにお願いしている。また、果実を放置したままにせず、ビニール袋などに密封して廃棄するよう適切な処理を呼び掛けている」と話す。専門家は現在の誘殺状況(1か月で872匹まで急増。徳之島は増殖)から「奄美群島では家庭菜園でも防除を行うことが当たり前という段階ではないか。有機農業の方々も防除の必要性への理解を求めたい。市町村の方々だけで防除作業を繰り返しても不十分な状況にあり、地域全体で対応していく必要がある」と指摘する。
沖縄県で進められている不妊虫放飼は奄美でも実施に向けて準備中だ。農林水産省の予算化を受けて県大島支庁のアリモドキゾウムシ不妊虫生産施設を改修して体制を整える。奄美大島や徳之島はハブの危険性もあり、野生の寄主植物(オキナワスズメウリなど)への対応が困難だけに不妊虫放飼の早期実施が待たれるが、それまでの備えとして自らできる防除への住民の理解が欠かせない。
セグロウリミバエが寄生する植物はウリ科ではニガウリやアカウリ以外でカボチャ、ヘチマ、トウガン、ズッキーニ、キュウリ、スイカ、メロンなどのほか、ウリ科以外でもパパイア、トマト、サヤインゲン、パッションフルーツなど多岐にわたる。誘殺数が抑制できず沖縄県のように緊急防除の対象になれば、こうした作物の出荷が自由にできなくなり園芸農業は大打撃となる。ミカンコミバエのまん延で緊急防除が実施され、大量のタンカンが出荷されず廃棄処分となった「タンカンの悪夢」が再び繰り返される。払拭(ふっしょく)するには「地域全体での対応」が実現するかだろう。
(徳島一蔵)

