夏高校野球第9日、第10日

【2回戦・松陽―徳之島】9回裏徳之島無死満塁、7番・西田の犠飛で三走・長尾が生還、2―2の同点に追いつく=平和リース

【2回戦・頴娃―大島】好リリーフで勝利に貢献した大島のエース元山=スミゼイパーク
【2回戦・頴娃―大島】延長10回、大島無死満塁、4番・山田が左犠飛を放ち、サヨナラ勝ち=スミゼイパーク

大島と徳之島が延長10回サヨナラ勝ち
喜界は神村に屈す

 

【鹿児島】第108回全国高校野球選手権鹿児島大会第9日は12日、鹿児島市の平和リース、スミゼイパークの両球場で2回戦4試合があった。

奄美勢は大島が頴娃と対戦。1―1のまま延長戦にもつれたが、十回裏、4番・山田の犠飛でサヨナラ勝ちだった。第1シード神村学園と対戦した喜界は0―10で五回コールド負けだった。

【評】大島は二回裏二死から8番・里が中前打で出塁。暴投で二塁に進み9番・蘇の右前打で先制した。四回表、3安打を浴びて同点に追いつかれ、なお一死一三塁で2番手・元山にスイッチ。元山が連続三振でしのぐと、五回以降は無失点で守りのリズムを作った。両者追加点が奪えず、同点のまま延長へ。十回表を無失点で切り抜けると、その裏、無死満塁として4番・山田が左犠飛を放ち、サヨナラ勝ちした。

【評】二回までに6失点の喜界は三回裏、二回途中からマウンドに上がったエース澄江を中心に守って初めて無失点で切り抜ける。四回表に1番・宮元がチーム初安打となる右前打を放って出塁。送りバントと、一邪飛の間に判断良く三塁を陥れ二死三塁と得点機を作ったが、生かせず。五回にも一死から6番・正木が2安打目の中前打を放ったが、続かなかった。9点差となった五回裏、何とか守って後半につなげようと二死まで粘ったが、最後に適時打を浴びて10点差となり、コールド負けとなった。

◎大島 ハイライト
「2回戦の壁」乗り越えるエース・元山、危なげない投球

「夏勝つのは本当に難しい」(山田大芽主将)と肌で体感したが、大島はサヨナラ勝ち。この1年間、なかなか乗り越えられなかった「2回戦の壁」を突破した。

苦しい試合だったが「接戦をどう勝ち抜くか?」(上野力監督)をテーマにやってきたことを随所に発揮できた。四回表、同点に追いつかれ、一死一三塁と一打逆転のピンチで、エース元山匠和澄をマウンドに送る。初回から「いつでも俺に投げさせろ!」の気持ちでずっと準備していた元山は、連続三振で期待に応えると、十回まで危なげない投球を続けた。

タイブレークにもつれた十回表。無死一二塁からの送りバントを、元山の好フィールディングで三塁アウトをとった。「プレーの前から、三塁手の師玉と『いくぞ!』とコミュニケーションできていた」(元山)。5月の県選抜大会、樟南を相手にタイブレークで敗れて以来、ずっと準備してきたことを大事な勝負所で発揮。無失点で裏の攻撃につなげることができた。

良い守備から良い攻撃の流れをつくる。三回以降、なかなかそれができずに村田、元山の投手陣を援護できなかった。4番でありながら、好機に2度凡退だった山田主将も忸怩(じくじ)たる思いだったが、十回裏、無死満塁で「直球だけを張って思い切り振った」犠飛で、ようやく名誉挽回の仕事ができた。

3回戦は、第2シード鹿屋中央に競り勝った鹿屋農が相手。山田主将は「きょうできなかったことを修正し、きょう勝ったことを自信にして次の試合に向かっていきたい」と次の壁を乗り越えていくことに意欲を燃やしていた。(政純一郎)

◎喜界・熱球譜
「神村とやれて良かった」宮元球児主将

四回表の先頭打者。「自分が打って流れを作る!」意気込みで打席に立つ。神村学園のエース・龍頭を相手に、空振り三振だった第1打席と同じく2ボール2ストライクまで追い込まれたが、「気持ちで食らいつくだけ」と内角低めの変化球を振り抜き、右前に運ぶ。

犠打で二塁へ進み、一邪飛の間に判断良く三塁に進んだ=写真=。得点にはつながらなかったが、三回まで完璧に封じられた打線が初めて機能した時間帯だった。

出身は東京。小2から硬式野球をやっていたが、中2の冬に体調を崩したことなどで一度野球から離れた。それでも高校では野球をやりたくて、進学先をいろいろ考えた時、父・大輔さんの母校である喜界を選んだ。21年前、喜界のエースだった父のプレーや、喜界の野球を映像で見て「喜界で野球がしたい」と思った。6、70人も選手がいた東京の少年野球と違って、今の喜界は9人ギリギリのチーム。野球部に入った同級生はいなかった。それでも「1人のやることがたくさんあって、自分には合っていた」

最後の夏、抽選会の前から「神村学園とやりたい」と願った。初戦勝てば神村と当たる「2」のくじを引いた。奇しくも21年前の夏、父・大輔さんの代も同じ番号で、シード神村と対戦している。どうせやるなら全国レベルの強豪に思う存分ぶつかってみたかった。投球、打球、守備、走塁…力の差はまざまざと見せつけられたが「後悔の気持ちがないほど思う存分やれた。最後に神村とやれて良かった」と心から思えた。

「伸び伸びと野球をやれていた」と大輔さん。「こんな野球ができたのも先輩、後輩、指導してくれた先生方、これまでのいろんな方の支えのおかげ」と感謝する。中3から高校時代を過ごす喜界島は、球児にとって「野球を通して、人生でも中身の濃い4年間になる」のは間違いないだろう。(政純一郎)

【鹿児島】第108回全国高校野球選手権鹿児島大会第10日は13日、鹿児島市の平和リース、スミゼイパークの両球場で2回戦4試合があった。

奄美勢はシード徳之島が松陽と対戦。終盤で同点に追いつき、延長十回裏に勝ち越し、3―2でサヨナラ勝ちだった。

第11日は14日、両球場で2回戦4試合がある。奄美勢の対戦は組まれていない。

【評】2点を先取された徳之島だったが、三回以降はエース長尾を中心とした守備で粘り強く守り、追加点を許さなかった。八回裏、一死から代打・井川の左前打で流れを作り、2番・正岡の中前適時打でようやく1点を返した。九回裏、エラーと連打で無死満塁とし、7番・西田の犠飛で同点に追いつく。なおも一死満塁とサヨナラの好機を生かせず、タイブレークの延長へ。十回表を無失点で守り切ると、その裏に無死満塁として3番・嶋田が中前打を放ち、サヨナラ勝ちを決めた。

◎徳之島 ハイライト
「徳高の野球」貫く松陽に苦しみながらも雪辱
「自分のやりたい方でいいぞ!」

九回裏無死一塁、5番・川畑夢翔がバント2つ失敗したところで、藤崎康平監督はそんなメッセージを川畑に送った。スコアは1―2で1点ビハインド。セオリー通りバントで送るか、打ってつなぐのか、その選択を川畑に託した。

「打ってつなぐのが徳高の野球。どんな形でもいいから、泥臭く食らいついた」と川畑。2球ファールで粘り、しぶとく中前に弾き返してこの試合初安打でつなぐことができた。無死一二塁。次の送りバントも十分考えられたが「送って二三塁にしても、次の西田が申告敬遠で歩かされると思います」という8番・紀乃の言葉で藤崎監督は腹をくくった。7番・野中も強打でつなぎ無死満塁。7番・西田が犠飛を放ち、土壇場九回で同点に追いついた。

苦しい試合だった。序盤3回は相手左腕の術中にはまって無安打。中盤以降も良い当たりが正面を突き、相手の守備も崩れず、攻撃の流れを全く作れないまま終盤を迎えた。

流れを変えたのが八回一死から代打で出た2年生・井川。初球を左前に弾き返す。低目を振らされるのでなく、高めに浮いてくるボールを自分の間合いで振り抜く。「こんな風に打つんだぞ!」と代打の切り札が「お手本」を示したことで、ようやくチームに火がついた。

打ってつなぐ。そんな野球ができるようになるために、練習の最後を全員100スイングで締めくくるのを日課にしていた。遠征先のホテルでも食事のあとに全員で100本振って身体にしみ込ませた。九回で仕留め切れなかったが延長、タイブレークでも流れは途切れず、最後はチームの要・嶋田雄心主将の決勝打で劇的な勝利を手にした。

「描いた形ではなかったが」(藤崎監督)、ぶれることなく貫いたことが最後の勝利を導いた。打ったこと以上に初戦に続いて守備で崩れず「守り勝てたのも大きい」(藤崎監督)。松陽は昨夏、同じように思い通りの野球をさせてもらえず、涙をのんだ相手。苦しみながらも雪辱できて嶋田主将は「この1年で力がついたのは間違いない」と確信できた勝利だった。 (政純一郎)