アルピニスト 野口健さんインタビュー

世界自然遺産登録5年メッセージ

 「奄美大島・徳之島、沖縄島北部及び西表島」が世界自然遺産に登録されて26日に5年を迎える。世界各地の自然遺産を訪れたことがあるアルピニストの野口健さん(52)にインタビュー。一度だけ訪ねたという奄美大島への思い出を語るとともに、世界自然遺産登録についてのメッセージを伺った。(東京支局=写真・屋宮秀美、本文・高田賢一)

エコツーリズム聖地になり得る奄美大島・徳之島

 奄美大島は2009年頃に訪れています。台風の季節に奄美最高峰の湯湾岳へ登頂。雨の中で感覚として原生林、熱帯雨林の気候を味わった。南国のジャングルの生き物は生命力が強い、と実感しました。そんな気候でしたので、真っ青な海を見ることはなかったです。ナイトツアーが増えることで、アマミノクロウサギが車にひかれるロードキルの問題があるんです、と現地の方に説明されたことも覚えています。世界自然遺産(以下・世界遺産)登録をされる前でしたので、登録されたことで、環境の変化があるのではと危惧しています。

 この地域は、自然環境や歴史文化を体験しながら学ぶ「エコツーリズム」の聖地になり得るでしょう。一方で観光のクオリティーをどう磨いていくのかが、大きな課題。世界遺産になったことで、それまでは特に注目していなかった人たちもこぞって出掛けるようになる。いろんな観光客が今後も増えることを予想し、どう自然を守っていくか考える必要がありますね。

 白神山地、小笠原、富士山、屋久島など、これまでに世界遺産に登録された地域のメリットとデメリットを検証していくことも必要です。あまりにも観光誘致に重きを置いた結果、不幸になったという世界遺産もありますから。

素晴らしい古里と誇りを持てる子どもたちに

 ハブを捕まえる名人とも交流しましたね。また、シマ唄の上手な中学生にも出会いました。その彼女(平田まりなさん)には、とても大きな才能を感じました。(その通りになった、と伝えると)。そうですか。昔から私は「違いが分かる男(コーヒーのコマーシャル=違いを楽しむ男)」と言われていますからね(笑)。ぜひとも再訪したいですね。今度は徳之島の文化も体験したいものです。

 観光客が増えても、沖縄のような都会にはならず、島の魅力を伝えていってもらいたいです。それにしても「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」という世界自然遺産の名前はいいですね。いまだに奄美は沖縄と思う方々もいますし。気象情報などで「沖縄奄美」と報じられるのもよくない。気象予報士でもある石原良純さんに今度抗議しよう(笑)。いずれにしても登録5周年は通過点。増える観光客とロードキルの問題や食害などを精査して、このままの自然を守りつつ、10周年、20周年を笑顔で迎えられるよう願っています。

 小笠原や屋久島など、世界自然遺産に登録された地域を訪ねた時に共通して感じたことは、地元の子どもたちが、地元を知らないことでした。「君たちは素晴らしい場所に住んでいるんだ。自分たちの住んでいる島に胸を張ってくれ」と強く言いたい。それを知らせる環境を大人が用意すべき。できれば、小学校などで、もっと島の自然の魅力を知る授業などを行ってほしいのですが、なにしろ、教育現場は忙しい。専門のガイドさんに委(ゆだ)ねてもいいと思います。だって子どもたちは世界遺産同様、未来への宝物なのですから。

メモ

 野口健(のぐち・けん)1973(昭和48)年8月21日、米国ボストン生まれ。7大陸最高峰世界最年少登頂記録を25歳で達成。テレビやコマーシャルで活躍するほか、富士山やヒマラヤでの清掃活動など環境問題にも取り組んでいる。