26日世界自然遺産登録5年

ナゴラン(城さん撮影)

 

 

 

アマミヤマシギ親子(城さん撮影)

 

 

 

ルリカケスのつがい(城さん撮影)

 

 

 

城泰夫さん

 

 
 
「生まれてきてよかった」思える島づくりを
世界ブランド海外からの客も増える
エコツアーガイド・城さん

 

 

 奄美大島と徳之島が世界自然遺産に登録されて26日で5年を迎える。登録以前からエコツアーガイドとして、奄美市の金作原原生林散策、マングローブカヌーなど、奄美の自然をガイドしてきた城泰夫さん(71)に話を聞いた。アイランドサービス(荒田政行代表)でガイドの仕事に就いて22年、島の自然を取り巻く環境はどう変わってきたのだろうか。(屋宮秀美)

 登録は新型コロナ真っただ中だったので当初は遺産登録の価値はそれほど感じられなかったが、コロナが5類になった3年前から一気に観光客が増え、同時に当時は4社ほどしかなかったツアー業者も、一気に増えた。

 客の要望はパンフレットや観光案内のホームページ、雑誌などを参考に予約が入る。「メインの風景が見てみたい」(例えば金作原、マングローブカヌー)、「ゴジラが出てくる雰囲気の森が見たい」などはっきりした目的を持っての依頼が多い。「珍しい花や生きものを見てみたい」も多く、以前と変わらない。以前と変わってきたのはマングース捕獲が進むのと反比例に森の中に、次第にいろんな生きものの姿を見るようになったこと。

 当初は金作原を案内すると、日に2~3匹は車の前を横断するマングースに遭遇していた。それが14、5年前からマングースを見かけることがなくなり、それとともにアマミノクロウサギ、たくさんの種類のカエル、トカゲ類が見られるようになった。

 知名瀬から金作原に向かう遊歩道にウサギのフンを6年前から見るようになった。最初に見つけた時は『とうとうクロウサギが帰ってきた』と、すこし興奮し、うれしかった。 今では普通に林道上でも、散策路でもクロウサギのフンを見ることができるようになった。夜行性なので昼間に姿を見ることはないが、フンがあるということは夜に動き回っているということで、「だいぶ自然が戻ってきたなあ」と感じる。最近は実感としては一番少なかった頃に比べたら、10倍以上はいるのではないかと思う。

 金作原、中央林道では滅多に見れなかったが、マングースの駆除が進んできたのと反比例に、回復してきた。金作原では、ここ3年ぐらいノネコを見ることもなくなった。増えている要因と思う。

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 ガイドは人材が全て。夏場は人手がいくらあっても足りないが、冬場は客が減り、天気に左右される仕事。安定した生活が難しかったが、「世界自然遺産」という世界ブランドになったことで、「ゆっくり奄美の森を歩きたい」と、観光客の少ない静かなシーズンを狙ってくる客も増え平均化してきた。

 ここ4年ぐらい前から、冬場(11月~3月)も、徐々に増えてきた。金作原トレッキング、マングローブカヌー、ナイトツアー(夜の生きもの観察)と定番コースのツアーは人気が高い。

 冬場はホエールウォッチングも人気を集めている。

 奄美が好きで、2~3回来ている人も結構多く、「お任せするので面白い所に連れて行って」という要望も入る。昆虫、花、鳥、時間が許せば、客のニーズに合わせた案内も。

 海外からの客も増えた。半数以上がアジア系。 韓国、台湾、中国、香港、シンガポール、マレーシア。4割が欧米、1割ヒスパニック系、南米からも。ブランドになったことで世界中から来島している。遺産地を全部制覇しているという人も。

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 世界から見た奄美の森は
 
 第一印象は「森が深い」。ユネスコが評価した一番大きな理由が、『深い森がはぐくむ、豊かな生物多様性』。例えば西表島(沖縄県)はイリオモテヤマネコ、やんばる(沖縄島北部)はヤンバルクイナ、徳之島はオビトカゲモドキ、奄美大島はアマミノクロウサギとシンボリックな生きものが生息し、固有種が豊か。

 奄美大島は面積の80~85%が森を占めている。深い森が育む生物多様性が魅力。日本全体から見たら面積としては狭いが、絶滅危惧種、固有種、日本国内で見ることのできる種の18%を占めてると言われている。

 「屋久島、沖縄は行ってきた。奄美はまだだったな」と来る人も多い。

 沖縄はリゾート地。豊かな森を体験してみたいと、奄美に来る人が多い。 沖縄とはやり方が違って、それがいい。リゾート地にならないことで豊かな自然も残る。

 開発もある程度は必要だと思うが、人的な圧がかかって、絶滅しかねないものもある。 今はリュウキュウアユの産卵時期は河川工事が半年ぐらいストップする。昔は土木関係者と自然保護関係者は犬猿の仲だったが、自然に対して配慮してくれている。

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 ガイドになったきっかけ

 昔から自然が好きで、大島高校の大野隼夫先生(植物愛好家)の影響が大きかったと思う今でこそ注目されているマングローブや役勝川渓流沿いの風景を50年前からその素晴らしさを把握し、「奄美の宝、日本の宝」とはっきりおっしゃっていた。

 観光で奄美大島に訪れる人は、奄美大島の森が世界的に見ても珍しい生態系で生物多様性にあふれている島だから、「負荷を掛けてはいけない」と言うのをよく理解している。島の人たちも、自分たちの住んでいる島が、世界的に見て、非常に高い価値を持った森を持っている島なんだというのを徐々に理解して来たように感じられる。行政の啓発普及活動も功を奏し、森にごみが散乱しているのは見なくなった。

 これはプラスに表れた面と思う。国立公園になった8年前から、昆虫トラップの数が減り、国立公園内では見ることが少なくなった。

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 未来に課題
 
 大島紬に代わる新しい産業として、観光業の果たす役割は大きいと思う。ツアーガイド、ホテル、飲食店、お土産店、観光関連にまつわる産業が売り上げを伸ばしていると思うが、それをいかにして、農業、畜産業、林業などその他の分野にも広く波及できていければいい。

 例えば、この時期のパッションフルーツの売り上げなど、観光業が、いろんな産業に波及効果を及ぼすことができれば、島民全体、島が潤う。観光業の存在意義もあると思う。自然保護と産業の両立は永遠のテーマ。

 昔と違って、自然保護に対する意識が高まっている。未来を担う子どもたちに、自分たちの住んでいるこの島が、世界的に見てどういう場所なのか、「自分たちが、この島に生れてきてよかった」と子どもたちが思える島づくりを今の大人、行政、島の50年後、100年後を見据えていろんなところで頑張ってほしい。これからの子どもたちのために。