奄美マングースバスターズの初代メンバーとして捕獲駆除に取り組んだ山室さん。奄美の自然について幅広い知識がある。7月12日に奄美野鳥の会が主催し、大和村の「奄美フォレストポリス」水辺の広場であった観察会は山室さんが担当した
2024年9月、外来種マングースの奄美大島での根絶が宣言された。昆虫や爬虫類、鳥類、哺乳類などを食べる雑食性のマングース。1979年頃に旧名瀬市に定着し、森林部に進出して急速に分布域を拡大、アマミノクロウサギなど在来の希少種を捕食し生態系に深刻な影響を及ぼした。環境省は2005年から外来生物法に基づく防除事業を開始し、駆除の専門チームとして結成したのが「奄美マングースバスターズ」だ。島内での捕獲作業の積み重ねが「世界的な快挙」とされる根絶に結び付いたが、バスターズ初代メンバーで17年間と長期にわたり作業に従事したのが山室(やまむろ)一樹(かづき)氏(65)。現在は㈱奄美自然環境研究センターで勤務し、NPO法人奄美野鳥の会に所属する山室さんに世界自然遺産登録から5年を迎えた中、直面する課題に対処する方策を聞いた。
――東京での会社勤めから移住したのが05年。まず移住の経緯を教えてほしい。
「小学生の頃愛読していたのが『ファーブル昆虫記』で、昆虫好き生きもの好きだった。南の島への憧れがあり、(移住するなら)沖縄でも良かったが、あまりにも人口が多い上に那覇などの居住地とやんばる地域(沖縄島北部で世界自然遺産登録地)は、かなり離れている。会社員時代、奄美を訪れたとき、居住地域と生きものがすんでいる森が、とても近いことが強烈に印象に残った」「05年6月に会社を辞め、その年に奄美野鳥の会が環境省からの委託で行っていたアマミヤマシギの全島調査にアルバイトで参加した。その際、たまたま環境省がマングース駆除のため専門の職員を募集していると聞き、それに応募したのが移住につながった」
――採用されて最初のメンバーとなる。
「バスターズ自体12人で発足し、その一人。ただし実際にはその3年ぐらい前から試行的に島内の人だけ6人で専従体制により、わなの改良や開発をしていた。これが進展し、本格的に専従職員の募集が開始された」
――バスターズの活動で感じたことは。
「一般の人が踏み込まないような森の中を歩いてわなを仕掛ける。仕事を通じて奄美の森の様子に触れることができ、それがすごく面白かった。たとえ原生林ではなくても、いい森だなと感じられた」「南の島の森の魅力に浸る一方、人間によって持ち込まれたマングースをわなを仕掛けて捕獲し殺す。とても抵抗があったが、マングースに食べられる在来種を守るためには仕方がないことと思うようにした」
――駆除を進めて印象的だったことは。
「08~09年あたりから在来種の回復が徐々に見られた。わなによる混獲でトゲネズミやケナガネズミが掛かるようになった。防除事業の検討会での専門家による研究発表でも在来種の回復が証明された。マングースの駆除が進むことで在来種が回復する。自分たちの仕事のやりがいが実感できた」
――環境省からの委託で駆除事業を担ったのが一般財団法人自然環境研究センター(バスターズが所属)。22年末に離れ、現在の勤務先に移る。
「自分としては最後までバスターズの仕事をしたかったが、植物に詳しい人がいないということで移籍することになった。バスターズの仕事の際、自然研がメンバーに注意したのが『希少植物を踏んだり、刈ったりしないように』ということ。だが、植物への知識がなければ具体的にどれが希少種なのか分からない。仕事の必要性から植物のことを勉強するようになったが、防除事業に理解のある方から資料をいただきとても役立った。奄美の植物のことを覚えることができた」
――マングースの駆除によって奄美の動植物を守るには、外来種駆除が効果的ということが示された。在来種の回復、混獲以外で気付いたことは。
「バスターズではマングースの捕獲だけでなく、同時に在来種のモニタリングも行っていた。年々確認地点が増えるようになったのはカエル類でも言えること。イシカワガエル、アマミハナサキガエルなど、かつていた所にまた戻って来た。植物について学んだことで希少種の新たな自生地を見つけたりもしたが、植物のほうは回復よりむしろ外来種の生息域がだんだん広がってきている。なんとかしなければならない」「一番気になったのはごみだ。森の中はすごくいい。しかし森から出ると畑の裏とか道路に出る直前とか、ごみがすごい。農薬に関するものも瓶や袋がそのまま放置されている。液体が半分入ったままの瓶もあった。農薬によって昆虫が減り、生態系に影響を与えているだけに適正な管理を行ってほしい」
――自然の回復に気付く一方で長年の活動により課題も把握されている。世界自然遺産の島となって5年。まず島民に求めたいことは。
「夜間、調査などで森の中に入る。気になるのがハブ捕りだ。林道を通り森にまで入り込んでいる。人の生活を守るためにも住宅地などに侵入してきたハブは排除しなければならない。捕獲すべきだ。ところが買い上げ制度によりお金になるからだろう。森にまで入り込み捕ろうとしている」
――県議会では「ハブは人間に危害を与えることから大きな問題となっているクマと同じ。県や市町村の買い上げ額をもっと引き上げ、捕獲を促進すべきだ」という主張が議員からあった。町村議会でも買い上げ額の増額が取り上げられた。夜間、林道を通ってのハブ捕りのどこが問題なのか。
(つづく)

