普段人が立ち入ることがほとんどないという旧納骨堂を訪れた親子連れ(23日、奄美市名瀬の和光園)
国立療養所「奄美和光園」を市民に予約開放し、偏見にさらされ続けた患者の苦悩の歴史を学ぶ「オープンデー みんなで学ぼう! ハンセン病」が23日、奄美市名瀬の同園であった。親子連れなど約300人が来園。参加者は、園内に残された旧納骨堂や旧火葬場跡など歴史的建造物群を巡り、強制隔離された場所で生涯を終えた入所者へ思いをはせた。
ハンセン病は、「らい菌」に感染することで起きる病気。症状は、手足の末しょう神経麻痺(まひ)や感覚障害(熱や痛みを感じなくなる)など。進行すると、顔や手足の変形が起こるため、外見などから患者や家族が差別にさらされた。
さらに、1907(明治40)年制定の法律(屋外生活患者の収容隔離)や、31(昭和6)年の「らい予防法」(在宅患者を含む強制隔離)で偏見が助長されていった。48(昭和23)年には「優生保護法」によって強制的に避妊手術を実施するなど、患者への非人道的な人権侵害が続けられてきた。
オープンデーは、ハンセン病の正しい知識を学び、人権意識の向上につなげてもらう目的で、市制20周年記念企画として開催。子ども向けのスタンプラリーやワークショップ、元ハンセン病患者の実話をもとにした映画「あん」の上映など多彩な催しが行われた。
園内散策スタンプラリーには、親子連れなど多くが参加。約13万平方㍍の広大な敷地を、同市のマスコットキャラクター「コクトくん」を探して歩いた。
最奥部にある旧納骨堂に真っ先にたどり着いた名瀬小3年の緒方蒼葉(あおば)君(8)は「ここまで来るのは初めて。自然がいっぱいで空気が冷たく感じる。納骨堂が何を意味するのか歴史はよく分からない」と話した。
看護師として同園で働く母親の亜紀さん(38)は「私自身もここを訪れる機会はほとんどない。子どもたちには、場所ごとの意味を教えたい。勉強してほしい」と話した。
午前の歴史資料館見学ツアーには8人が参加。福祉室専門員の有川清四郎さん(65)が、▽神経障害による視覚障害者が多かった▽知覚麻痺で足を切断した人のためブリキ製の義足が作られた▽救いを求め患者の8割がカトリックに入信した―などと説明した。
奄美市の80歳代の女性は「不自由な手で、夫が妻のために精巧な鏡台を作ったと聞き涙が出る思い。なぜ政府は、隔離政策を改めなかったのか」と複雑な思いを口にした。

