奄美中央病院1階に開設している通所リハ(デイケア)の利用者
㈲わんわんネットが事務所1階で行っているデイサービスの利用者
抱える問題点、喜島さんは続けた。「ニーズはありつつも介護職に関わるスタッフの確保が難しい。離職者が出る一方で入職者が少なくなっている。人材が確保できなければ介護する側の負担が大きくなるだけにノーリフトケアのように福祉用具の活用のほか、業務の役割を明確にし、一人一人の業務負担が少なくなるようにしたい」。なるべく人の手を取らない、お互いの負担にならない取り組みだ。
人材育成、専門的な資格所持者の受け入れに向けては自治体との連携に目を向ける。「国に求めたいことは診療報酬や介護報酬の引き上げだが、これは全国的なこと。まずは地元自治体との連携ができたらありがたい」。具体的に挙げるのが人材を育てる研修だ。訪問介護の担い手であるヘルパーの養成へ研修会開催を例として挙げ、「一医療機関や事業所の取り組みだけでは難しいだけに、自治体が間に立って人材育成のための方策を進めてもらえないだろうか」。喜島さんは提案する。
奄美看護福祉専門学校がこども・かいご学科の新年度学生募集を停止した中、若手の人材育成の場をどう補うか。市民の暮らし、老後に関わることだけに地元自治体である奄美市が中心となって具体化が求められている。
■ ■
中央病院を運営する奄美医療生協では「いい介護の日」(11月11日)に合わせて今年度、地域住民や学生を対象に「介護職場体験企画」を実施した。介護の仕事のやりがいを体感してもらい将来の担い手を育てることを目的としたが、通所リハで受け入れたのがリフトの導入を検討している事業所の職員。吉田さんは「リフトの活用による介護を実際に体験していただいた。患者さん、介護者、双方にとって楽な介護・介助を地域に発信したい。それには負担が軽減できることを体験によって理解してもらうことが一番。今回はこちらのリフトの取り組みを知ってもらったが、逆に他の事業所の取り組みで負担軽減に役立つものがあるかもしれない。同じ介護の現場で情報を交換し共有し合う機会があってもいいのではないか」と語った。
喜島さんはさらに加えた。「資格があるのに仕事をしていないという離職中の人もいる。理由としてやりがいや続けられない環境に課題があるのでは。離職者に対し後任となる人材が補充できず医療機関の閉院、介護事業所の閉鎖が出ている。職場体験の受け入れによって負担が軽減できる取り組みがあることを広めていきたい」
事業の安定は経営の安定に直結する。それを左右するのが担い手の存在だ。それぞれの業務の魅力について3人は語った。「介護保険の分野では自力支援、自己実現をメインに利用者の皆さんを支援する立場。やりたいこと、生活課題の解決に関わっているのが魅力」(正野さん)、「ノーリフトケアという技術を持って、利用者の皆さんの現在ある、残っている力も生かしながら提供することができる。福祉用具の活用によってうまく自立支援ができ、それによって笑顔が見られたらすごくうれしい」(吉田さん)、「リハビリという視点に立てば地域と共存できるかを目指したい。医療機関での入院から自宅に戻っても通所リハだけでなく、訪問リハによって自宅でも生活できる環境を整えたい。そのためにも自宅で安心して生活できるよう手を差し伸べていきたい。院内だけでなく院外でも関わり、家族などと共に自宅で過ごせる関わりにやりがいを感じる」(喜島さん)。
■ ■
医療機関で進められている通所リハのデイケアに対し、通所介護のデイサービス。同じ建物内で、このデイサービスと保育を〝両立〟させている事業所がある。奄美市名瀬永田町にある㈲わんわんネットだ。川を挟んで目の前には緑が広がり四季折々の表情に接することができる、おがみ山を見渡せる。
「よくペットショップに間違えられます」と笑うのは代表取締役で介護支援専門員の中里浩然さん(51)。2000年、中里さんの父親が幸町で会社設立。訪問介護事業所(ヘルパー)と居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)を立ち上げた。6年後、通所介護事業所(デイサービス)を港町にある紬会館1階に開設。介護タクシーも始めたが、同事業は2年間で終了した。12年に現在の事務所(旧亀山医院跡)に移転し、16年から建物の2階で家庭的保育事業を開始している。
わんわんネットの理念として掲げているのが「わん FOR ALL、ALL FOR わん」(一人はみんなのために、みんなは一人のために)。わんわんネットが大切にするものとして「オンリーワン(存在の尊重)」「わんらしく(主体性の喚起)」「ネットワークづくり(支えあいの促進)」は、事業所名から結び付けたもの。相互扶助を表しており、島口の「わん(自分を指す)」も取り入れることで親しみやすさがある。
取り組んでいる事業は訪問、居宅、通所の介護関係と保育の4事業であり、このうちデイサービスが今年(2026年)で開始から20年、保育が10年の節目を迎えることになる。毎年1月にはこの4事業に関わる職員による実践発表会を行っている。「お互いの取り組みをまとめて発表するもので、それぞれの職員にとってはやりがいにつながる。新しく入った職員には各事業の現状などが把握できる研修の場になる」。中里さんは説明する。
建物の1階で行われているのがデイサービス。要支援1~2、要介護1~5の認定者を対象に定員は13人、職員は9人(パートを含む)だ。午前9時から午後4時半までで、利用者を迎えた後、▽健康チェック▽脳トレなどのアクティビティ▽入浴(午前中)▽昼食▽1時間程度の午睡▽集団体操やレクリエーション▽送り―という流れだ。
保育の方は奄美市認可の地域型保育施設で、0歳児から2歳児までを受け入れており定員は5人と少数。「保護者の思いに寄り添って、その子らしさや発達段階に合わせた関わりを行う」家庭的な愛情あふれる保育を目指している。保育者の数は5人で、シフトにより1日3人で5人の幼児の保育と、まさに我が子に接するように一人一人に目が届く関わりだ。(つづく)

