~介護のカタチ~④通所サービスの現場から

~介護のカタチ~④通所サービスの現場から

会話や観察を重ね家族のような雰囲気を大切にしている「あおぞらデイサービス」。手前の職員が管理者の田代彩さん

特色と課題
部分的な共同化の検討、限度額引き上げの必要性

奄美市役所(名瀬総合支所)近くにあるシダマ薬局ビル。その3階にあるのが「あおぞらデイサービス」だ。対象地域は同市に限定しており、利用登録者は30人、1日当たりの定員が14人。介護保険の認定では要介護1(13人)、同2(5人)の高齢者が多く、比較的介護度は低いが、認知症が半分以上を占めるという。週5日(月~金曜日)の稼働で、午前8時半から午後4時半まで。

利用者を迎えた後、最初に行うのが健康状態などを確認するバイタルチェック(体温・血圧・脈拍・呼吸などの測定)。「重視しているのは会話。週に2~3回の利用が多い中、先週の状態は把握できていることから、今週の状況により疲れているようなら『何かあった?』と必ず声掛けをしている」。勤務して10年、看護師・機能訓練員だが、現在は管理(責任者)する立場でもある田代彩さん(37)は語る。

田代さんの職種(機能訓練員)が示すように個別で行っているのがリハビリ。だが、事業所内にはリハビリ用の器具はなく専門職の理学療法士もいない。看護師と介護福祉士が担当している。田代さんは「前任者(田代さんの前の責任者)が個別機能訓練の技能や知識を習得し、私たちに指導してくれた。そこからのスタート」と説明する。リハビリで用いるのは手だ。利用者一人一人に触れることで足や腰などの状態、さらに全身状態のチェックを徹底するという。「筋肉をほぐす感じ。朝のバイタルチェックも数値を拾うだけでなく会話や観察を通して変化を把握していく」。看護師だけに医療的な対応が可能だ。
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 アドバイザーとして同事業所の運営に関わっている長谷川大さん(61)は「介護度的には低くても生活維持のレベルがだいぶ落ちてきている利用者が多い。足が動く、手が動く、認知できるといった生活を維持していくための機能訓練に力点を置いている。どちらかと言えばOT(作業療法士)的なサポート。それを進めていく上での会話や観察力は他事業所よりも強いところではないか」と分析する。「身体に打撲跡があったらどうしたの?足の筋肉に張りがあったら何かあった?という感じで必ず細かく聞くことを心掛けている。会話を重ねる方がリハビリにも入りやすい」と田代さん。

あおぞらで展開されているデイサービス。長谷川さんはこう解説する。1日24時間の中で、ここ(あおぞらデイ)での生活は6~7時間。点にすぎないが、観察や会話によって線につなげている」。田代さんは朗らかに語った。「家族のような雰囲気を大事にしたい。楽しく過ごすのが一番。皆さん、これまで長年頑張ってきた方々。そんな皆さんから頼っていただけるよう私たち(職員)は心掛けている。一人暮らしで全然しゃべっていないという方もいらっしゃる。とことん付き合い、ここでいっぱいしゃべっていただく。皆さん笑顔で帰っていただきたい」

そんな田代さんについて長谷川さんは「会話の引き出しをたくさん備えている。パーソナルスペース(距離感)の取り方、会話の入り方がうまい。田代さんじゃないと話さないという方もいらっしゃる。会話や観察によって引き出した情報をしっかりとフィードバック、職員間で共有している」と話す。田代さん自身は楽しんで対応しているそうだ。「どうしたら喜んでいただけるか。それを考えることが楽しい」という。
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 田代さんを軸に職員がまとまり利用者を包み込むあおぞらデイ。課題もあるようだ。「人ありきのヒューマンサービス。とても大事なことだが、システム的な効率面で考えると厳しい部分がある。ICT(情報通信技術)の取り入れで管理部門の簡素化に向けて、どう作り上げていくか検討段階にある」と長谷川さん。個人単位の事業所間で情報交換にも取り組んでいるそうだ。「通所事業所のそれぞれの特色は残しながらも、複数の事業所が連携することで効率化が図れないだろうか。国も事業の共同化を目指す方向を打ち出しており、スケールメリットを目指すのではなく部分的な共同化を検討しなければ個人単位の事業所が生き残るのは難しいのでは」

あおぞらデイの経営者である㈲シダマ薬局代表の師玉信一郎さん(68)は「事業を継続していくには人の確保が一番の問題。利用者がいても人がいないとサービスの質を担保できない」と語る。許認可制の介護事業は資格要員を配置できなければ事業ができない。デイサービスの場合、生活相談員が該当する。「事業所と利用者は存在しても資格要件に該当する人員が不在で窮地に立たされるという事業所が出てくるかもしれない。事業所間の連携で職員も補完し合うという案もあるが、不足ぎみの中で事業をしており、職員を他事業所に回せる余裕はない。こうした専門人材の確保で特に離島は難しいだけに、関係する市町村が特例措置を設けてほしい。どの程度緩め、どの程度締めるのか難しい面があるものの、実情に照らし合わせた規制緩和が必要ではないか」

師玉さんは介護保険の区分支給限度額にも目を向ける。限度額の引き上げの必要性だ。要介護度別に定められたもので、1か月に保険給付の対象となる介護サービスの上限額のこと。長谷川さんによると、要介護度に応じていくらまで介護保険サービスが使えるか決まっており、介護保険開始当初からほぼ変わっていないという。1人当たり使える金額が頭打ちのままと言える。介護報酬を上げても限度額の枠が変わらないと現在のサービスを継続した場合、限度額を超える事態が発生する。そうなるとサービスの回数を減らすしかないそうだ。

「これまで10回利用できたのが8回に減ってしまう。限度額を超えたら100%実費となる。実費額を払っても利用しようという高齢者はいない」「処遇改善給付金だけを引き上げて国は介護職員の給料引き上げを事業所に求めている。職員の処遇改善と同時に経営する側の体力を削ったままにしては、経営側の体力は続かない」。長谷川さんは指摘する。

師玉さんは続けた。「大枠(支給限度額)が上がらないと介護業界は復活しないのではないか。枠の中での事業、天井があるのに1回あたり吸う空気が増えてはやがて窒息してしまう」と例え、小手先だけでは事業経営は改善しないことを訴えた。

各事業所の特色あるサービスの展開。それによって多様な取り組みが提供され、質の向上が可能となり利用者の満足度を高めることができる。こうした事業の安定・継続へ現場の声に基づいた抜本策にかじを切らない限り、介護事業の将来は見えてこない。=おわり=
(徳島一蔵)