居場所づくり㊦ フリースクール・デジタル創作

学校の放課後の時間帯に開設しているデジタルMINE。デジタル機材を使っての創作活動は子どもたちの可能性を引き出している

「ここは楽しい」「いろんな知識が入る」

 デジタル機器による創作体験など子どもたちに独自の居場所提供につながった休眠預金活用事業。助成期間の終了(来月末)まで目前だ。更新はできないのだろうか。林さんは説明した。「休眠預金活用事業は自治体など公共機関の予算がつかない分野の掘り起こしを目的にしている。新たな団体などへの助成はあっても、助成の継続は目的としていない」

 子どもの権利の尊重から利用料金をとらない「無償は続けたい」とする中、助成終了後運営に必要な財源確保をどうするか。雇用するスタッフも守らなければならない。一つの方法として現在、クラウドファンディング(CF=インターネットを通しての資金調達)に取り組んでいる。プロジェクト名は「島の子に安心と創る喜びを。デジタル創作の居場所を未来へつなぐ」。目標金額は300万円。資金使途として「子どもたちの居場所を支える人件費及び拠点の維持費等」を挙げる。公開期間は2月28日まで。

 CF挑戦の理由として「好奇心に蓋をさせない『場』を維持するために」とある。「私たちは、家庭の経済状況に関わらず誰でもアクセスできるよう、利用料を可能な限り抑えて運営してきました。しかし、運営費の多くを助成金に頼っているのが現状です。子どもたちがようやく見つけた『自分の居場所』を失うことなく、安心して失敗や挑戦を繰り返せる環境を長期的に維持するため、広く支援を募ることを決意しました」

 ■肯定感

 林さんによると、不登校の子どもたちを受け入れているフリースクールに対し行政の支援は得られていない。「家でも学校でもない第3の居場所(デジタルベースMINE)を含めて活動の基盤が弱い。これまで周知不足だったという反省点もある。CFを機会に、私たちの活動を広く知ってもらい応援してくれる方が増えたらありがたい」。事業により実現している活動、子どもたちはどのように受け止めているのだろう。それはアンケート結果から認識できる。

 昨年11月、MINEに通う子どもたちにアンケートをしている。「MINEではホッとしたり、リラックスできていますか」という、居場所の心理的な安全性に関する4段階評価についてみてみよう。「とてもそう思う」(87・9%)「まあまあそう思う」(12・1%)合わせて100%となり、回答者全員が肯定的だった。高い安心感の背景には、「自分のペースで過ごせる(自由)」という子ともたちの高いニーズがあることが分かったそうだ。〈自分には、よいところがあると思いますか〉という質問もしている。「あてはまる」30・3%、「どちらかといえばあてはまる」54・5%となり、合わせると84・8%が自己肯定感を示した。

 回答者の多くは、「たとえ失敗しても、もう一度チャレンジしようと思える」に対しても「とてもそう思う」と回答する傾向が強くみられたという。報告ではアンケート結果についてこう分析している。「子どもが『安心』な場所を得て、『自己肯定』を感じ、その結果が『挑戦』へとつながる一連の流れがあり、居場所での経験を通じて、子どもたちが前向きな姿勢を身につけていることが確認できた」。林さんによると、長く通う子どもほど自己肯定感が上がる傾向にあるそうだ。

 ■「できない」が「できる」

 今月中旬の夕方、放課後の時間帯にデジタルベースに通う子どもたちの声を拾った。3Dプリンターでキーホルダーを作成するためノートパソコンでデザインしていた市内居住の小学4年生・國本喜介君。「(スタッフの皆さんは)優しいし、とても分かりやすく教えてくれる」

 國本君は昨年12月、宮崎市のイオンモール宮崎であった第7回Minecraft(マインクラフト)カップまちづくり部門地区大会南九州ブロックに出場。熊本、宮崎、鹿児島3県の高校生以下の子どもたちが教育版マインクラフトを使ってデジタルものづくりに挑戦する作品コンテストだ。國本君は「友達と2人」で参加し、仕上げた作品は全体で2位となる優秀賞に輝いた。大きな自信となっている中、水曜と土曜の週2回通う。「ここには家にはない3Dプリンターなどがある。できないことができる。ここは楽しい」。笑顔を見せた。

 同様に市内に居住する6年生の徳田伊織さんと越間柚妃さん。友達からの情報で存在を知り、週2~3回通い1年になる。2人が夢中で行っていたのがCanva(キャンバ=オンライングラフィックデザインソフト)を使い画像を引っ張り出し、好きなアニメのクイズ問題づくり。「ここでは家でできないことが、いっぱいできる。いろんな知識が入る」。2人は声を弾ませた。

 父親と一緒に来島、2泊3日の日程で滞在という千葉県船橋市の男子小学生もいた。活動の体験からのスタートだ。

 子どもたちの様子について林さんは語った。「(デジタル機材は)集中力に役立っている。デザインの加工の仕方を覚えてのデザイン力、自分のアイデアによって動画編集力も習得している。同じことをする仲間同士が集まっていることで刺激にもなっているようだ」

 デジタルによる子どもたちの成長はフリースクールでもみられる。自宅にはなかったタブレットのiPad(アイパッド)を手にしたことで、自分でイラストを描いたり動画編集もするようになった子どもがいる。こうしたデジタル体験によって友達もでき、共に目標を持ちながら情報系の高校への進学につながった。また、パソコンを入手したことで、「すごく難しい」という3D開発のソフト「Blender(ブレンダー)」を触ることができるようになった子どももいるという。

 学力や知識などを得るため学校に通い教師によって教科を学ぶことは大切だ。一方で重荷を抱え、登校できない子どもが存在する。そんな子どもたちをサポートし、デジタルとの出会いによって興味や関心を引き出し楽しさを根底にしながら成長を生み出しているMINEの取り組み。運営を安定・継続させることは、子どもたちの未来にチャンスを与えることではないだろうか。
(徳島一蔵)