奄美大島のソテツの葉に付着したソテツシロカイガラムシ。国の外来種リスト改定案では、「防除推進外来種」ではなく「防除検討外来種」として見直される
環境省と農林水産省は現在、「我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト」改定案に対する意見募集(パブリックコメント)を行っている。改定案にはソテツシロカイガラムシ(アウラカスピス・ヤスマツイ=英語表記の通称CAS〈キャス〉)も動物(昆虫)で掲載されているが、「防除推進外来種」ではなく「防除検討外来種」に見直される位置付け。奄美大島では被害が激甚化している中、この見直しに疑問の声が出ている。
意見募集は今月2日から始まり、期間は5月1日まで。総合的に対策が必要な外来種(国内に定着が確認されているもの。生態系等への被害のおそれがあるため、国、地方公共団体、国民など各主体がそれぞれの役割において、防除、遺棄・導入・逸出防止等のための普及啓発など総合的に対策が必要な外来種)の場合、今回の見直しでは、これまでの区分が整理され、緊急対策外来種と重点対策外来種は統合されて防除推進外来種に、その他の総合対策外来種は防除検討外来種となる。
改定案によると、防除推進外来種は生態系等被害が大きく、積極的に防除する必要があるもの。「総合的対策外来種と位置付けられた種類のうち、被害の深刻度に関する基準のいずれか、または複数に該当する外来種」。基準は①生態系にかかわる潜在的な影響・被害が特に重大②生物多様性保全上重要な地域に侵入・定着し被害をもたらす可能性が高い③絶滅危惧種等の生息・生育に重大な被害を及ぼす可能性が高い④人の生命・身体や農林水産業等社会経済に対して重大な被害を及ぼす―を挙げている。
防除検討外来種の方は、防除推進外来種に比べ、生態系等へ及ぼす被害は小さいまたは不明であるものの、生物多様性保全上重要な地域や、産業等への被害発生状況に応じて防除を行う必要がある外来種としている。カテゴリー分けの基準は「国内に定着しているが、防除推進外来種に該当するほどの生態系等への被害ではない」
この見直しについて一般社団法人日本ソテツ研究会の髙梨裕行会長は「奄美大島の現状を見れば、被害は明らかに激甚化している。国内に被害が広がる前に対策を積極的に進めるべきであり、防除検討というスタンスは不十分ではないか。ランク付けを甘く見るべきではない。ソテツの役割として景観上の貴重性、天然記念物もある。被害に危機感を持つべきで、改定案に意見を提出したい。奄美群島の住民の代表として市町村長の皆さん、議会議員の皆さんも関心を持っていただき国への働き掛け(防除検討ではなく防除推進外来種に)をお願いしたい」と求めている。
行政だけに任せるのではなく市民参加型を提言する田町まさよさんは「今回の案の『検討(防除検討外来種)』という位置付けでは、奄美の被害スピードには間に合わない」と指摘する。「今必要なのは、国が本腰を入れて対策を動かす『実行(防除推進外来種)』への格上げ。このパブリックコメントは、子どもからお年寄りまで誰でも、自分の言葉で参加できる。難しい専門用語はいらない。『この風景を孫に残したい』『ナリみそ(ソテツの実を使ったみそ)の文化を守りたい』といった、一人一人の切実な思いを書くことが、何より国を動かす力になる」と田町さん。
パブリックコメントに参加する意義については「個別の返信はないが、寄せられた意見に対しては、国が公式な考え方をまとめて公表する義務がある。私たちの声が国の正式な記録に残り、回答を引き出せる貴重なチャンス。奄美の未来を決める大事な議論に、ぜひ皆さんの声を届けていただきたい」と強調する。パブコメの書き方・提出の仕方などの問い合わせにも田町さんは応じる(電話090・9595・5823、メールiyashinoamami@song.ocn.ne.jp)。
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改定案で示すソテツシロカイガラムシの主な記載内容は次の通り。
定着段階=初期(限定分布)▽カテゴリー=防除検討外来種▽原産地・分布(日本を除く)=東南アジア原産。中国南部、香港、ベトナム、シンガポール、台湾、ニュージーランド、グアム、コートジボワ―ル、コスタリカ、西インド諸島、フロリダ、ハワイ、テキサス等の世界に広く外来分布▽日本での分布=奄美大島、喜界島、沖縄島▽生息環境等=ソテツ自生地、ソテツほ場▽備考=ソテツを加害する。ソテツに伴って移動するおそれがあるため、生息確認地域からのソテツの移動には十分な注意が必要。奄美大島のソテツがWebのフリーマーケットに出品されていたこともある。なお、奄美大島と沖縄島のソテツシロカイガラムシは、別種である可能性が指摘されている。

