市松模様の泥大島コートを着て東京を歩く田中さん

加賀友禅の鮮やかな着物も洋服のように(紹介パンフレットから)
奄美のタンカン農家、奄美サンファームの東京営業部長・戸田敏博さん(69)の十数年来の友人である田中和明さん(57)は東京出身。戸田さんと一緒に長野県上田市のリンゴ農園の1本を共同出資。毎年、収穫時期にはリンゴ農園に出向き、枝一杯たわわに実るリンゴの収穫作業を行っている。昨年末の収穫に田中さんは仕事の都合で行けなかったが、ワゴン車満タンに積み込んだリンゴのおすそ分けに田中さんと記者も預かった。その席に、田中さんは市松模様の泥大島の着物をリメイクしたコートを着用。そのすてきな、いでたちに思わず日を改めて話を聞いた。
田中さんが、泥大島をコートにリメイクしたのは、「伝統工芸士の技術を残す仕組みが作れないかと、昨年末に立ち上げ、今年から本格的に活動していくためにサンプルとして作った」と説明、会社㈲藍流経営研究所を興した。驚くのは、着物はコートではなく、あくまでも着物のままリメイク、元の着物に戻し、そのまま使えるという画期的なアイデアだ。着付けなしで着られる新しい着物という発想。
2020年から「いしかわ観光特使」も担う田中さんの名刺にはサステナビリティ&レジリエンスデザイナー(持続可能な発展を目指す考え方や取り組みと逆境に強い組織の作り方)、宅地建物取引士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、潜水士、ビル経営管理士、1級小型船舶操縦士と今までに見たことのない資格が並ぶ。が、大島紬を着て歩くのはなぜ?
田中さんはビル管理士や宅建の仕事をする中で、昨年1月に起きた能登半島震災後に仮設住宅に住む人たちの中でも、手仕事をする人たちの生活困窮ぶりを聞いた。いしかわ観光特使だが、内閣府のBCP(事業継続計画)策定の提言者の一人でもある。緊急事態は突然発生する。中小企業や被災者の生活が脅かされないためにできることはないかと考えた。 「このままでは日本の文化を守る伝統工芸士の技術や仕事を失う。かつてのいい織物を見たり、触れたりすることが大事。そのためにできることはないか」。名産品・加賀友禅に思いを馳せた。
手仕事ができる友人女性と着物→コートまでは誰しもが考えるが、「また着物にして楽しみたい人のために」再び着物に戻せるという「FLASH KIMONO」を考案した。着付けなしで着られる新しい着物というコンセプトだ。着物をなるべくカットせずにリメイクする手仕事は想像するだけで難しそうだ。男性は泥大島、女性は鮮やかな加賀友禅でサンプルを作った。メンズでは、自らがモデルになって、東京の街を泥大島の「FLASH KIMONO」でかっ歩していたというわけだ。
同研究所は今年から本格始動する。田中さんは「一つの文化を後世に残すために、着物や輪島塗など、末端の文化を守っている技術者の生活支援と手仕事ができる人たちのコネクションづくりを構築していきたい。応援しあえる仕組みづくりを始めたばかり。ぜひ奄美の人たちにも知恵を貸りたい。タンスの中の大島紬をぜひ寄付してほしい。手仕事できる人にも協力してほしい」と頭を下げた。今から動けば、日本の文化を守ることができる。被災者を助けることができる。これから持続可能な仕事、と熱い思いだ。
着物や反物、古着など寄付する場合は、電話090・1552・5192藍流経営研究所・田中さんまで一報を。配送料は着払いで無料。リメイクした着物は同研究所で販売、技術者たちを支援していく。

