ワイルドライフセミナー

アマミマルバネクワガタ(写真右上)の「生育域外研究」について語る田中良尚学芸員(2日、奄美野生生物保護センター)

固有クワガタ保全へ
〝生育域外研究〟の成果発表
伊丹市昆虫館・田中学芸員

奄美群島や琉球列島における動植物の研究成果を一般に還元する講演会「あまみワイルドライフセミナー」(環境省、奄美自然体験活動推進協議会主催)が2日、大和村思勝の環境省奄美野生生物保護センターであった。約40人が参加。伊丹市昆虫館(兵庫県)の田中善尚(よしなお)学芸員(47)が「絶滅しそうな昆虫をまもる~飼育室で、フィールドで~」と題し、奄美群島で急速に生息数を減らしているアマミマルバネクワガタを守る独自の取り組みを紹介した。

田中さんは昆虫調査を目的に毎年奄美大島や徳之島を訪れ、生息域や生息数(調査地における確認数)の変化を記録し続けている。

絶滅危惧Ⅱ類に指定されているアマミマルバネクワガタについては、「採集規制された2013年頃を境に、徳之島の観察地点で確認される数が増えている」とグラフを示し説明した。

奄美大島では、03年頃から龍郷町や奄美市住用町の個体群が壊滅状態で、現在観察できるのは瀬戸内町周辺に限られるという。

田中さんは、絶滅危惧種全般の保全を目的に、所属する昆虫館で幼虫を飼育し「生育域外保全」の研究に取り組んでいる。卵~幼虫~成虫の変態過程を観察・研究し、ふ化や蛹化(ようか)(サナギになること)の環境条件の解明に努めているという。

これまでの研究で分かったことは▽3年かけ終齢幼虫となり4年目で蛹化~秋に成虫▽蛹化には、18度の環境条件(冬の寒さ)が必要▽幼虫の主な食べ物は朽ち木の中の菌糸(キノコ)▽奄美大島では100%スダジイに産卵する―など。

このほか、産卵を誘発するフェロモンや野外個体と累代の飼育個体の遺伝的多様性を調べる研究にも着手しているという。

12年から実験を続けているという田中さんは「現在は産卵床の研究や、自然界の幼虫の食べ物を増やす実験に取り組んでいる。保全技術を確立し、危機的状況に備えたい」と話した。

昆虫好きが高じ15年前に東京から移住したという奄美市の吉川明宏さん(45)は「マルバネの観察に森に入ることも多いが、場所によっては見られなくなった所もある。研究が進み、数を増やしてくれることを祈りたい」と話した。