深海ヤドカリの共生紹介

ヤドカリとイソギンチャクの共生関係について講演する吉川晟弘熊本大学准教授

貝を増築する新種イソギンチャク
博物館講座 熊本大学・吉川准教授

 国の天然記念物オカヤドカリなど海の生き物をテーマにした第5回奄美博物館講座(同博物館、鹿児島大学国際島嶼(とうしょ)教育研究センター共催)が30日、同館であった。約40人が聴講。2023年に島嶼研奄美分室特任研究員として、奄美群島各地でヤドカリ類の研究を行った吉川晟弘(あきひろ)熊本大学准教授(33)が、深海にすむヤドカリと共生し、成長に合わせ〝貝殻を増築〟するイソギンチャクの不思議な生態など研究成果を報告した。

 ヤドカリは巻き貝の貝殻を「宿」として使う十脚類の甲殻類で、カニやエビの仲間。日本には水生・陸生合わせ200種が確認されているが、陸生のオカヤドカリの仲間は7種のみ。奄美大島には3種(ムラサキオカヤドカリ・ナキオカヤドカリ・オカヤドカリ)が生息する。

 吉川さんは、同市笠利町用にある古墳時代の「用安良川(ようあらごう)遺跡」でオカヤドカリの集積跡で釣り針が発見されていることから、「餌として使われていた」と言及。人の生活に密着した存在だったと話した。

 研究テーマでもある「ヤドカリとイソギンチャクの共生」では、東京大学大気海洋研究所に所属していた22年に、自身の研究チームが発見し大きな話題となった、深海にすむジンゴロウヤドカリに共生する新種のヒメキンカライソギンチャクなどを動画で紹介。

 この新種は、ヤドカリの成長に合わせ、分泌物を出して「擬貝」を作り貝を増築するという。学名に、宮崎駿監督のアニメ「ハウルの動く城」に登場するキャラクター「カルシファー」の名をつけた裏話なども披露した。同種は22年の「世界の海洋生物新種トップ10」にも選ばれている。

 吉川さんは講演の最後に「全ての生きものは、生態系を維持する役割を担っている。希少種であるかどうかではなく、数千年から数億年かけて誕生した進化を、短い時間で壊してはならない」と呼び掛けた。

 島嶼研奄美分室の北之坊誠也特任研究員(38)は、24年夏に発生した奄美群島におけるサンゴの大規模白化の回復状況などを報告。「もともと新潟県佐渡島だったサンゴの生息北限が24年に山形県まで広がった」などと説明した。

 龍郷町から参加した20歳代の女性は「海の中には、想像を超える生命の神秘がある。深海の不思議など、もっと研究を進めてほしい」と話した。