セグロ、モニタリングに差

セグロウリミバエの不妊虫放飼開始を伝える沖縄県のチラシ

「厄介な害虫」
沖縄では不妊虫放飼 奄美も連携、さらに自前を

 主にウリ科の果菜類のほか、海外の事例ではかんきつ類への寄生も報告されている重要な害虫セグロウリミバエ。鹿児島県の発表では奄美群島で171匹の雄成虫の誘殺があり、増加を抑制できない深刻な状況だ。ニガウリ(ゴーヤー)など寄主植物の移動が制限される「緊急防除」が行われている沖縄県では、繁殖を防ぐため不妊虫のヘリコプターでの大量放飼(ほうし)も開始されている。果樹・果菜類の害虫ミカンコミバエと異なるのがモニタリングの差だ。トラップ(わな)に置かれる誘引剤がミカンコに比べ弱いため雄の除去が不完全で、専門家や関係機関からは「厄介な害虫。警戒が必要」との声が上がる。

 経営技術課のまとめによると、トラップ調査による奄美群島での最初の確認は今年3月17日の伊仙町(1匹)。以降、発生地域の沖縄県に近い与論町や沖永良部島の知名町を中心に誘殺が続き、島別(瀬戸内町の離島・3島を除く)で誘殺ゼロは喜界島のみ。今月12日には奄美市で初確認され、誘殺は7市町村に及ぶが最多は与論町(107匹)で、全体の62・57%と6割以上を占める。与論ではまだ同定中もあり、誘殺数がさらに増えるのは確実だ。

 寄主果実内の幼虫やさなぎの寄生の有無を確認する調査も行われている。それにより与論町では2例、知名町と和泊町で1例ずつ、今月12日には奄美大島で初となる宇検村で1例の幼虫が確認された。

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 奄美群島での誘殺数増加、幼虫確認が広がる状況について農林水産省門司植物防疫所は「世代交代により定着しないよう、引き続き警戒(調査・防除)が必要」と指摘し、薬剤などによる防除が不十分なため沖縄県でも発生源になっている家庭菜園については「ウリ科野菜など寄主植物の栽培の自粛をお願いしたい」と呼び掛ける。誘殺が町内各地区で継続的に確認されている与論町では産業課が町内放送などを通し「農園や家庭菜園で栽培している農作物のネット・袋掛け、栽培後の残さや不要な果実の早急な処分、島外への持ち出し自粛への協力」を要請している。

 家庭菜園の発生源防止へ沖縄県は不要果実の適切な処分方法を分かりやすく伝えている。▽埋設処理=できるだけ深い穴を掘り、20㌢以上の厚さの土をかぶせる。埋設が浅すぎると、幼虫が生き残ってさなぎになり、羽化してくる▽密閉・陽熱処理=寄生が疑われる果実や残さ等を穴などがない丈夫なビニール袋に入れて密閉し、虫が死滅するまで太陽熱で蒸し込む(夏場の晴天なら1週間、冬場は1か月程度が目安)▽茎葉の早期片付け=ウリ科野菜は収穫後も枯れずに果実や雌花を付け続けるため、収穫後はトラクターで早めに茎葉をすき込み片付ける▽冷凍処理=家庭菜園等で量が少ない場合の方法。ビニール袋などに密閉して冷凍庫で2~3日間凍らせ虫が死滅してから家庭ごみとして処分。奄美でも参照にして実践したい。

 セグロウリミバエもミカンコミバエ同様、発生地域からの飛来や生息状況を観察する方法として用いられているのがトラップだ。内部には雄成虫を引き寄せる誘引剤を置くが、ミカンコで採用している誘引剤(メチルオイゲノール)は強力で遠くからでもおびき寄せるなど精度が高い。誘引後にはテックス板(誘引板)で殺虫して防除できる。専門家は「この誘引剤の効き目でミカンコは雄を大量に除去できることから、防除しやすい」と指摘する。

 セグロの方は、他のミバエ類と同じ誘引剤(キュウルア)を用いているが、「とても強力なメチルオイゲノールに比べると弱い」。なお、メチルオイゲノールはセグロには効果を発揮しない。誘引力の差から「誘殺できていない雄成虫がかなり生息している」と捉えるべきであり、誘殺数は生息数に比例しない。また、ウリ科だけでなくナス科、さらにパッションフルーツやスモモ、パパイア、ドラゴンフル―ツ、グアバ、インゲンなどにも寄生するなど除去しなければならない寄主植物が多く、さらにオキナワスズメウリといった野生化した寄主植物の多さも「防除を難しくしている」というのが専門家の見解だ。

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 ミカンコとの誘引力の差を埋めるにはより多くのトラップを増設する必要があるが、予算のほか、誘殺の確認や寄主植物の除去、防除に取り組む人員の確保といった体制の整備が欠かせない。国(農水省)に働きかけていくには地元自治体が、この害虫が与える影響を認識し危機感を共有できるかにかかる。

 蔓延(まんえん)防止、根絶へ沖縄県は新たなステージに入った。今月14日からスタートした不妊虫のヘリ放飼だ。同県の場合、病害虫防除技術センターで不妊虫を週300万匹まで生産でき、将来的には週2400万匹まで生産を目指すという。こうした増殖体制の充実は奄美から見るとうらやましさと同時に、沖縄での増殖と放飼の取り組みを奄美でも活用できないかという発想が浮かぶ。

 前述したように誘殺数が最も多く、沖縄本島とはわずか20数㌔しか離れていない与論島で沖縄県の他の離島同様(初日は久米島で実施)、不妊虫の大量放飼ができないだろうか。各種施策の根底となっている奄美群島振興開発特別措置法(奄振法)では沖縄県との連携促進を打ち出している。「沖縄との連携の一つ」という認識で、奄美の市町村、鹿児島県が沖縄県と協議できないだろうか。仮に沖縄で根絶できたとしても、すぐ隣にある奄美群島で生息が続くなら、発生のリスクは存在すると考えたい。奄美と沖縄が連携してこそ、この害虫対策は万全になる。

 連携を緊急的な対策として進めると同時に、抜本策では奄美でも不妊虫生産拠点の整備を進めたい。沖縄同様、増殖により不妊虫放飼の体制を整えることができれば、県内、さらに長崎県など九州本土でも誘殺されているミカンコミバエのような事態に直面しても奄美からカバーできる。沖縄に頼らなくても対策を推進する「自前の体制」にまで踏み出すべきだ。
 (徳島一蔵)