一村が愛した森を堪能

一村の森を散策する参加者たち

美術部生徒や専門家ら23人
和光園敷地内 作品に思い、散策楽しむ

 晩年を奄美大島で過ごした日本画家・田中一村が生前に歩いた「一村の森」の散策会が14日、奄美市名瀬の国立療養所奄美和光園敷地内であった。関係者が案内役を務め、地元の高校美術部生徒や専門家ら23人が小道を散策。現代に受け継ぐ作品に思いを馳せつつ、一村が愛した森を堪能した。

 会は、NPO法人未来へつなぐ田中一村(久留ひろみ理事長)が主催。一村の功績や足跡を次世代につないでいこうと企画した。

 一村は、1958(昭和33)年12月に奄美大島に移住。与論島、沖永良部島に寄った後、59年に同園官舎に移り住み、島での創作活動に着手。この時期には代表作の一つ『パパイヤとゴムの木』なども描いている。

 一村の森は、同園敷地内の奥手にある木々に囲まれた林道で、当時の一村の散歩コースとして知られる。普段は敷地内で立ち入りができないため、許可を得て訪問。この日は同園の上山卓朗事務長、元職員の松原千里さん、写真家の濱田康作さんらが案内した。

 参加者らは、ダチュラやクワズイモといった作品のモチーフになった植物などを眺めながら、喧騒(けんそう)外れた静かな森を気持ちよく歩いた。アカショウビンが羽休めに使うという岩も観察しつつ、道中にある旧火葬場や納骨堂では足を止めて、手を合わせていた。

 奄美高校美術部1年の田畑綾華(りんか)さん(16)は「いざ入ってみると特別な場所だと感じた。(一村の)自然と一体になる姿勢、観察することの大切さを学んだ気がした」と笑顔だった。

 久留理事長は「一村が揺籃(ようらん)期=始まりの時期=を育んだ場所で、島では当たり前だった風景を、芸術に高めた一村の力を改めて感じることができた。これからも若い世代と一村をつないでいけるよう取り組みたい」と話した。