泉芳朗の偉業たたえる

先人の熱意と平和の尊さ後世へ。児童生徒代表も交え「日本復帰記念の集い」=25日、伊仙町義名山公園

関係者約150人が集い「復帰運動の父・奄美のガンジー」をたたえた

出身地・伊仙町で復帰記念の集い
奄美群島日本復帰72周年

 【徳之島】奄美群島の日本復帰実現から72周年を迎えた25日、2025年度「日本復帰記念の集い」(伊仙町主催)が、同町義名山公園の「泉芳朗頌徳記念碑像」前で開かれた。町内の児童生徒代表を含む約150人が参加し、「祖国復帰運動の父」「奄美のガンジー」と称される泉芳朗の全身像を前に、「日本復帰の歌」の斉唱や詩の朗読、講話を通じてその偉業をたたえた。
 
 伊仙町は23年12月、復帰70周年を記念した「日本復帰記念祭」を開催し、群島民一丸となった復帰運動の先頭に立った泉芳朗(名誉町民)の功績を再評価。歴史と気概を次世代につなぐ決意を新たにした。一方で、時代の移り変わりとともに泉の出身地さえ知らない若者が増えているとの指摘に、「泉芳朗先生を偲ぶ会」(楠田哲久会長)が呼応。昨年、奄美市名瀬のおがみ山にある日本復帰記念碑前と並行して、義名山の全身像前でも初めて集いを開いた。今年は伊仙町主催に移行し、児童生徒代表らも運営に加わった。

 集いは午前10時、町内中学校の代表生徒3人の司会進行で開会した。泉の銅像前に献花後、伊田正則伊仙町長が主催者あいさつに立ち、「断食悲願や群島民99%の署名活動、各地域での復帰運動。先人たちの一致団結した熱意と信念、平和の尊さを後世に引き継ぎ、未来を切り開かなければならない」と訴えた。

 続いて「日本復帰の歌」を斉唱し、町内の全8小学校の代表児童が泉の詩「断食悲願」を朗読。復帰運動に身をささげた当時の思いに耳を傾けた。その後、「泉芳朗先生を偲(しの)ぶ会」の楠田会長(78)=奄美市=と、泉の手記などを基に著書『泉芳朗の歩んだ道』をまとめた甥(おい)で同会顧問の泉宏比古さん(67)=神奈川県=が講演した。

 楠田会長はあらためて「奄美群島の日本復帰運動は非暴力・無血の勝利であり、世界的にも特筆すべき出来事。一滴の血も流さず、99・8%という圧倒的な賛成署名で勝ち取った団結力は、ギネスブック級、ノーベル平和賞に値する」と強調。泉顧問は「断食や非暴力・不服従の精神で運動を牽引(けんいん)した芳朗の思想の根底には、トルストイやガンジーと共通する平和主義、非暴力主義があったと考えられる」とも述べた。

 司会を務めた1人・面縄中2年の中富沙奈さんは、「泉芳朗さんがいなければ、奄美群島は今もアメリカ統治下のままだったかも」と感謝を語り、「世界で紛争が絶えない今だからこそ、命を大切にし、話し合いで解決する姿勢を学びたい。戦後80年を迎え、二度と戦争をせず、対話によって平和を守るべきだと思う」と話していた。