日本民俗学会、奄美で年会

小島摩文氏

町健次郎氏

荻原左人氏


参加者212人が集まった日本民俗学会の第77回年会(1日、奄美市名瀬)

群島内の比較研究は必要
「日本の南」公開シンポ

 日本民俗学会(大石泰夫会長)は1日、奄美市名瀬のアマホームPLAZA(市民交流センター)で第77回年会「奄美大島大会」を開いた。「日本の〈南〉の民俗学―鹿児島・奄美・沖縄―」を主題に公開シンポジウムを行い、民俗研究の方法論について、比較研究の必要性が討議された。

 同学会は1949(昭和24)年、民俗学の研究や普及などを目的に発足。前身は民俗学者・柳田國男を中心に1935年結成した民間伝承の会。年会(学術大会)の多くが大学機関で開かれ、奄美大島では初めて。一般聴講者含む212人が参加した。 

 シンポジウムは2部制。第1部は演題「それぞれの〈南〉の民俗学」で鹿児島純心大学の小島摩文教授、瀬戸内町立図書館・郷土館の町健次郎館長、琉球大学の荻原左人教授が調査研究を発表した。

 小島氏は、鹿児島での民俗学の歴史や調査研究の特徴を解説。36年設立の「鹿児島民俗研究会」には奄美群島出身の岩倉市郎、永井龍一が名を連ね、研究方法として周圏論(周圏分布)を多用していると説明した。

 町氏は、奄美の民俗学研究史を追いながら、「鹿児島、沖縄との比較研究の実績は両地域で蓄積され、奄美では低調。在野研究者は奄美を知るために、『何があるか』を研究したのでは」と考察。奄美での比較研究は進んでいないと指摘した。

 萩原氏は、沖縄から見た奄美民俗について、「1609年の薩摩藩侵攻以降を画期に研究されてきた」とし、「正月・年取り儀礼の食物」を例に「奄美、沖縄は文脈による多様な境界線が現れうる地域。歴史的背景を考慮しつつ、比較研究が可能」とした。

 意見交換では、「日本の南」における民俗学の研究方法を討議。町氏は「奄美で比較研究が少ない理由は薩摩、琉球系と分けていくと何も残らないから」と分析。しかし、「奄美の複雑な生活文化を読み解くには、群島内の比較研究は必要。それは周圏論では読み解けないかもしれない」と見解を示した。

 第2部は民俗芸能の研究に焦点を当てた調査発表が行われた。

 年会は2日、研究者11人が南西諸島に関する民俗学の個別発表、3日は奄美大島北部を巡る臨時研修を実施。8日はオンラインによる研究発表会を予定。