台湾からアサギマダラ飛来

龍郷町長雲峠付近で再捕獲されたアサギマダラ。マークから、台湾から北上したものと分かった(安川さん提供)

龍郷町長雲峠で再捕獲 マークで判明
南西諸島への北上記録、初の可能性

龍郷町長雲峠付近でのアサギマダラのマーキング(翅=はね=への標識)により、マークのある個体が再捕獲され、標識者からの情報などから、台湾でマークされたものが飛来したと分かった。台湾から日本国内への北上は今回を含めて6例目(マーク確認)で、南西諸島での確認は初めての可能性がある。秋の南下に比べて春の北上は情報が少ないだけに、貴重な記録となりそうだ。

再捕獲したのは千葉県佐倉市在住の安川憲さん(71)。日本大学名誉教授(医学博士)の安川さんは、定年退職後の2019年からアサギマダラのマーキング活動で喜界島と奄美大島を訪れるようになり、奄美大島には5月22~25日まで滞在した。

最終日の25日は長雲峠付近でマーキング。この時期の吸蜜植物であるイジュの花にアサギマダラが集まっているのを確認。イジュは高木のため、4メートルの長さがある捕虫網を使い捕獲。晴天に恵まれると一日で100匹前後マーキングすることもあるが、この日は雨天だったため6匹しか捕獲できなかったものの、その中の1匹にマーク(「05YMS4/26」)があった。

千葉に帰宅後、安川さんはFacebookのアサギマダラ・マーカーの広場に投稿したところ、応答から台湾からの飛来と判明した。Facebookの書き込みによると、05は「その日5匹目にマークされた個体」で、YMSは場所である陽明山(台湾北部の台北市郊外に位置する山)を表示。マーク後4月26日に放たれたものが、1カ月後の5月25日に再捕獲、移動距離は878・5キロになるという。

安川さんは「25日は雨天で、帰りの飛行機の時間の関係から捕獲数がとても少なかったが、台湾でマークされたものと知り驚いた。アサギマダラが少なかった喜界島に比べて、イジュが開花している関係で奄美大島では多くのアサギマダラにマーキングすることができた」と語った。

アサギマダラの研究家として知られる栗田昌弘さん=群馬パース大学学長、医学博士=によると、南下に比べ北上ルートはマーキング数が少ないこともあり謎の部分が多いという。台湾から日本国内への北上数もこれまで本州で確認された5例しかなく、今回の確認で6例目(うち5例は今回のマーク者)。栗田さんは「南西諸島で確認されたのは初めての可能性がある。非常にまれで、貴重な記録」と指摘した。