子どもの成長は「信じて待つことが大事」と話す松永太郎氏(1日、龍郷町りゅうがく館)
龍郷町教育委員会は1日、町内小中学校の教職員を対象にした「2025年度教育講演会」を生涯学習センターりゅうがく館で開いた。約90人が聴講。西郷隆盛の長男として同町で生まれ、政治史に名を刻んだ西郷菊次郎の生涯を描いた青少年ミュージカル「KIKUJIRO」の演出家、松永太郎氏(51)が「演劇体験が育ててくれるもの」をテーマに講演。自身の舞台感を背景に、子どもの成長には「敬意をもって接し、信じて待つこと」と語り掛けた。
同ミュージカルは、菊次郎の生誕160年を記念し22年に初開催。毎回、同町の小中高校生40人前後が参加し、1年を通しての稽古で自己肯定感を高めてきた。
松永さんは、大学卒業後の約6年間を過ごした沖縄県で、中学生が地域の歴史を舞台で演じる事業に関わり演出の道へ。その後、出身地の鹿屋市で手掛けた古代の奄美を舞台にした高校生ミュージカル「ヒメとヒコ」は、07年の初演から18年続くロングランとなっている。
ミュージカルの出演者を子どもとして扱うのではなく、「俳優」として接してきたという松永さん。
「ゴール(本公演)までは地味な稽古の積み重ねが続く。チーム全員で一つの物語を作る過程は社会の縮図」と表現し、「俳優の異質な個性に光を当てるのが演出家の醍醐味(だいごみ)」と話した。
松永さんは、〝朝令暮改〟と周囲から言われるほど、毎回指示することが異なるという。その理由について、「成功体験にしがみついていても成長はない。昨日の自分を否定し、さらなる成長を求めるのが演劇」と語った。
舞台に立つ以上は、子どもたちにプロのマインド(精神)を求めていると言い、「客の思い出を作るのが俳優の仕事」と理解を求め、チームに貢献する気持ちを持ってもらうことが「貢献感」や「達成感」につながると話した。
「敬意をもって接することで、子どもたちは安心感に包まれ成長する」と話し、「子どもは成長の過程や苦悩を言葉に表現できない。信じて待つことで、いきなり成長した姿を見せる」といい、その様子を「昆虫が羽化するときの一生に一度の美しさ」と例えた。
児童がミュージカルに参加しているという円小の教諭は、「参加した児童は表情が変わる。やる気スイッチが入るようだ。学校行事にも興味を示し一生懸命に取り組み始める」と評価した。

