22年奄美大島ウミガメ調査

今年6月に奄美市の海岸で産卵したアカウミガメ。産卵数の減少が懸念されている(奄美海洋生物研究会提供)

産卵399回、昨年上回る
アカウミガメ過去2番目の少なさ

 奄美海洋生物研究会(興克樹会長)は3日、「2022年奄美大島におけるウミガメ上陸・産卵調査」および「リュウキュウイノシシによるウミガメ卵採食状況調査」の結果を公表した。同年4月~9月の産卵回数は399回(アカウミガメ96回、アオウミガメ274回、不明29回)で、前年比22・4%の増加。アカウミガメは13年の663回をピークに減少傾向にあり、過去最少だった昨年の59回からは増えたものの、過去2番目に少なかった。アオウミガメは昨年より33回増加、過去11年間は安定的に推移している。上陸回数は582回(アカウミガメ130回、アオウミガメ380回、不明72回)だった。

 調査は、ウミガメの産卵モニタリングや奄美市ウミガメ保護監視委員業務の一環として実施したデータおよび、奄美野生生物保護センター、県、島内5市町村などが行ったデータを集計、分析したもの。

 アカウミガメの産卵回数は近年、減小している。2016年以降はアオウミガメの産卵回数がアカウミガメを上回っており、同島の産卵優占種となっている。

 アカウミガメの産卵減少の要因としては、近年の東シナ海での混獲やエサ資源の減少などの影響が考えられるものの、現時点では明確な因果関係は認められていない。数年おきに産卵するウミガメの生態などから、同研究会では「生息数の増減については中長期的な分析が必要。継続した調査が求められる」としている。

 アオウミガメについては、同島沿岸海域に周年生息する亜成体(未熟な成体)が増加しているが、産卵数の増加との関連は明確でないことから、アカウミガメ同様、「今後の産卵回数の推移を注視する必要がある」としている。

 同島では近年、アオウミガメ亜成体の増加により、沿岸域などで海草を食べるウミガメをシュノーケリングで観察するツアーなどが盛んに行われるなど、観光資源として注目、活用されている。一方で、死んだウミガメが漂着するケースも増えており、同研究会では「今後はエサ資源量を含めた生息数のモニタリングの拡充が求められる」としている。

 リュウキュウイノシシによる卵の採食については、採食の被害にあった産卵巣数が昨年の81巣から今年は50巣に減少。ウミガメの産卵数は昨年より増加した一方で、採食産卵巣数は減っている。被食率は昨年の24・8%から12・5%に減少した。12年から11年間の平均被食率は18・2%となっている。

 産卵数の減少が続く浜では、採食の発生がなくなる傾向が見られるが、採食があった浜の多くで、次の年も採食があり、リュウキュウイノシシが恒常的にウミガメの卵を食べていることが示唆されるという。