長野県松本市で開催された戦争遺跡保存全国シンポジウムでは計測データで作成した立体図も示して、瀬戸内町教育委員会の鼎丈太郎さんが同町の戦争遺跡調査で用いたドローン計測の成果を発表した(提供写真)
戦争遺跡保存全国ネットワーク主催の「第28回戦争遺跡保存全国シンポジウム」が23~25日の3日間、長野県松本市であった。2日目の分科会で瀬戸内町教育委員会が同町の戦争遺跡調査で用いたドローン計測による成果を報告。現地調査を行う前に実施することで、安全性が保たれ、期間や人員確保の削減が見込め、「有効な調査方法の一つ」とした。
シンポ分科会で発表したのは、同町教委埋蔵文化財担当の鼎(かなえ)丈太郎さん(49)。奄美大島南部にある同町は、大島海峡を取り囲むように明治期から終戦間際までの戦争遺跡(軍事施設跡)が数多く残っている。このうち2023年には「奄美大島要塞(ようさい)跡」(現在は古仁屋高校がある要塞司令部近くに置かれた手安弾薬本庫跡と奄美大島西南端の西古見砲台跡、加計呂麻島東端にある安脚場(あんきゃば)砲台跡で構成)が国史跡に指定され、今年6月には旧海軍施設を含めた「奄美大島要塞跡及び大島防衛隊跡 附(つけたり) 大島需品支庫跡」が国史跡に答申された。
発表で鼎さんは、計測で用いたヤマハ発動機のドローン(産業用無人ヘリコプター)の特徴として①レーザーが斜めに発射されることから樹冠をすり抜け地上に到達することで、地表面のデータ取得が可能②バッテリー式ではなく燃料で飛行することから、長時間の飛行や重量のあるレーザーを搭載することが可能で、広範囲・高密度のデータを取得できる―を示した上で、成果を説明。
この中では、いずれも加計呂麻島にあり、危険箇所やハブ咬傷の危険性がある山頂や山斜面の調査となった安脚場・瀬相の両地区について「約76㌶の広範囲な計測予定地を短期間で安全に計測し、データを取得できた」と強調。確認された遺構については、安脚場=旧海軍の平射砲陣地と軍道。聞き取りで存在を確認していたが、現地では草木が繁茂し確認できなかった水路。人用の掩体(たこつぼ)とみられるくぼみや兵舎の基礎▽瀬相=未調査地区の山地で機銃陣地や軍道とみられる構築物。爆弾痕とみられる円形の穴を複数―を挙げた。
鼎さんは「ドローン計測調査は、人件費や調査期間の大幅削減が可能であり、調査員の負担軽減(安全性の向上)が見込まれる。現地で判別困難な構築物を安全に確認することも可能」と述べた。
戦後80年が経過し、戦争の実体験を語り継ぐことが限界に達しつつある中、戦争遺跡の保存や活用を通じて戦争の実相を正しく認識・継承することを目的としたシンポ。初日は記念講演や基調報告、2日目は分科会と全体会、最終日はフィールドワークが行われた。鼎さんは「グーグルアース利用の戦跡確認など、ドローンを含めてデジタル技術、科学分析の発表が多かったのが印象に残った」と振り返った。

