3万年の営み解明へ

国史跡指定を目指し意見を交わす専門家ら=1日、天城町生涯学習センター


縄文アクセサリーづくり(勾玉研磨)を体験する家族連れ

下原洞穴遺跡シンポ
国史跡指定目指す 徳之島・天城町

 【徳之島】天城町と同町教育委員会主催の2025年度「下原(したばる)洞穴遺跡シンポジウム」が1日、同町生涯学習センターで開かれた。約3万年前から7千年前に至る生活の痕跡が連続的に確認されている同町西阿木名の下原洞穴遺跡について、最新の調査成果が報告され、国史跡指定に向けた価値観を共有。町内外から約140人が来場した。

 同遺跡は2009年に発見され、2016年から鹿児島女子短期大と町教委が合同で7次にわたる発掘調査を実施している。最大の成果とされるのが、約3万年前の炉跡(火を焚いた跡)の発見で、旧石器時代から徳之島に人が定住していたことを示す重要な証拠となった。南西諸島の人類史研究を大きく前進させる成果として注目されている。

 さらに、約2万年前から土器出現期までの奄美諸島におけるいわゆる「空白期」を埋める地層や遺物が確認されている点も大きい。これまで琉球列島では同時期の人類活動の痕跡は乏しかったが、同遺跡では生活の継続をうかがわせる資料が出土。「断絶」ではなく「継続」の可能性が示唆されている。

 土器文化に関する成果も相次ぐ。約1万3千年前の細隆線文土器(隆起線満文土器)は日本最古級に位置付けられ、本土とほぼ同時期に土器文化が始まっていた可能性を示す。また、独特な意匠を持つ条痕文土器の出土からは、島独自の文化形成が進んでいた可能性も指摘されている。

 動物遺存体の分析では、約1万7千年前にアマミノクロウサギを〝資源持続に配慮〟しつつ食用としていた可能性も判明。サンゴ礁の発達に伴う魚介類利用の増加など、島嶼(しょ)環境への適応過程も読み取れる。石灰岩洞窟という地質的特性により骨などの有機質遺物が良好に保存されており、当時の生活を高精度で復元できる「タイムカプセル」と評価されている。

 同遺跡シンポは23年2月に次ぐ開催に。福岡大、鹿児島県埋蔵文化財センター、東北大、東京大の研究者が登壇し、同遺跡形成の過程や土器誕生の背景、新器種の土器出土も明らかになった隣接する重要遺跡「コウモリイョー遺跡」との関連、徳之島への最初期人類拡散―などについて発表。パネル討議では「空白か連続か」をめぐる視点から活発な議論が交わされた。

 具志堅亮学芸員は最後に「明らかになっているのは遺跡全体の一部に過ぎない」と述べ、継続調査と保存体制の強化を進め、国指定史跡を目指す方針をあらためて強調した。

 会場ロビーでは並行して出土品の特別展示のほか、青少年や家族連れを対象に弓矢や縄文アクセサリー(滑石製勾玉)づくり体験コーナーも設けられ、来場者が古代の暮らしに思いをはせた。