田中一村生誕110年記念 特別講演・対談

田中一村生誕110年記念 特別講演・対談

一村の絵画の魅力などを専門的見地から語った長谷川教授

抽象化と生命の本質を表現
東京藝大大学院 長谷川教授「奄美だったから生まれた」

 奄美市笠利町の県奄美パーク田中一村記念美術館は10日、同パーク内奄美の郷で「田中一村生誕110年」を行った。東京藝=げい=術大学大学院の長谷川祐子教授が一村の絵画の魅力などを語った。

 この夏、フランス・パリで行われる「ジャポニスム2018」の一環として開催される「深みへ―日本の美意識を求めて―」展の中で、一村の絵画が初めて海外展示される。長谷川教授は同展のキュレーター(美術展の企画運営を行う立場)として、同展に携わる。

 講演の中で長谷川教授は、同展全体の趣旨や、会場の詳細、展示方法などについて話した後、「 (一村の絵画は)対象の抽象化を行うことで、生命のエネルギーの本質を捉えている」とその魅力を話した。

 また、一村の天井画とゴーギャンの絵画を比較もし、類似点を解説。2人が「画壇の停滞に対して、新たなものを“南”に求めた」とし、「辺境に行くことで作品を変革した」と2人の生き方の共通点も語り、同展では2人の絵画を隣同士に並べるとした。

 同館の宮崎緑館長の、「一村の絵画は世界に通用するか」という質問に対し、長谷川教授は「専門家には『実物を見るまで分からない』とも言われるが一方で、日本画の様式からの転換、抽象さと繊細さの両方を持ち合わせているという評価はもらっている」と回答。また、「一村の絵は本人が持っていた日本画の様式と、奄美が“混血”となってできたもの。奄美だったから生まれた」と一村にとっての奄美の重要性も語った。

 「深みへ―日本の美意識を求めて―」は7月14日から8月18日までの間、フランス・パリの「ロスチャイルド館」で開かれる。