松藤啓介大島支庁長インタビュー

観光・農業で「稼ぐ力向上」
エビデンスに基づく政策を

 2022年度の産業政策総括監を務め、23年度の土木部次長を経て大島支庁長へ就任。奄美群島への配属は初めてだが、離島は種子島で経験し、20年度には総務部市町村課長を務めるなど、12市町村の首長らの相好も心得ている。奄美群島の主要産業でもある観光、農業を中心に「稼ぐ力の向上に取り組みたい」と語る松藤啓介大島支庁長に、今後の展望や意気込みを聞いた。

 ―奄美の印象は。

 「気候も暖かいが、人の温かさを感じる。島が多い。島々の個性、多様性が奄美群島の特長だと思う。県のパイプ役として、全部一緒じゃないよと、本庁に伝えることが私の仕事だ」

 ―本庁での経験をどう生かす。

 「奄美群島成長戦略ビジョンを見ても(郡民所得の県対比95%達成など)施策の目標値は高い。頑張らなければ達成できない数値。これまで高齢者いきいき健康課、産業政策総括監など初代の課長職を多く経験してきた。データで現状を分析し伝えていくのが自分のやり方。スムーズな目標達成に貢献できれば」

 ―奄振法はどう進める。 

 「観光も農産物も沖縄との経済交流にどうつなげるのかが大事な視点。移住促進についても、奄美の魅力やライフスタイルを発信しながら、住宅のミスマッチをどう克服するかが課題だ。デジタル化などを進め、稼ぐ力になる施策を打ちたい」

 ―インバウンド(訪日外国人客)対策は。

 「クルーズ船の1人あたりの消費額は全国平均2万4千円に対して奄美は1万2千円。2次交通などの課題もあるが、地元に落とす仕組みづくりが必要。ターゲットを置くのか、沖縄と連携した高付加価値化を目指すのか、本庁と連携しながら取り組みたい」

 ―支庁職員には何を伝えた。

 「現状を分析しEBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング=証拠に基づく政策立案)に取り組む。夢を語るのも大事だが、エビデンスに基づき地に足の着いた政策を進めなければならない」

 ―抱負を。

 「県施策にもある観光、農業で稼ぐ力を向上させたい。今年度は地域企業振興監、地域企業支援官もできた。活用しながら地域の声を聴き、何ができるのかやっていきたい」

 (聞き手・青木良貴)

 (まつふじ・けいすけ)福岡県柳川市出身。妻と息子2人の4人家族で、初の単身赴任。鹿児島大学法文学部卒。1990年に入庁後は、企画部参事、総務部市町村課長、くらし保健福祉部保健医療福祉課長などを歴任。奄美では「子どもを呼んでホエールウォッチングがしたい」。「文化・歴史を知ることが一歩」として生涯学習講座にも申し込んだ。56歳。