ナマコ分布調査

未記載種として確認された通称=クレナイオオイカリナマコ(提供写真)

未記載2種含む14種確認
情報乏しい生態判明
奄美大島沿岸

 和歌山県自然博物館の研究チームは、奄美大島沿岸の調査により、内湾域においてのナマコの分布パターンが、生息環境と関係があることが初めて明らかになったと発表した。同チームは、調査で確認された14種のうち2種が未記載種であり、「研究が進めば新種となり得る」としている。

 海域での調査は和歌山県立自然博物館の山名祐介氏を始めとしたメンバーで笠利湾、大島海峡、請島水道の3海域で2018年11月に5日間行った。研究報告によると、得られた標本を分類学的に精査した結果、採集地の底質の水深、底砂の粒径や隙間に含まれる有機物の量などとナマコの種ごとの分布パターンが関係のあることが、初めて判明されたという。

 研究メンバーの藤井琢磨氏(鹿児島大学)は、「ナマコは底砂の有機物を食べ浄化し排出する性質があるため、漁猟などによる減少傾向で生態系バランスの変化が懸念される」と話す。また、分布や生態に関する情報が乏しい状態だったという。

 同チームは「本研究は奄美大島沿岸におけるナマコ類の保全には欠かせない重要な基礎知見である」とした一方で「短期的、小規模な暫定的な結果にとどまる」とし、網羅的な調査を早急に進める重要性を示した。

 生態に関する同報告は19年9月発行の和歌山県立自然博物館館報、20年5月30日公開の日本ベントス・プラクトン学会の国際誌「Plankton and Benthos Research」に論文として掲載している。

 研究メンバーは山名氏と国島大河氏(和歌山県立自然博物館)、小渕正美氏(神奈川県真鶴町立遠藤貝塚博物館)、藤井氏の4人で構成された。