日本初記録種「ウンブキアナゴ」

天城町教委が「天然記念物」第1号に指定し保護対策を強化した「ウンブキアナゴ」(提供写真)

町指定「天然記念物」第1号に
天城町教委 保護へ条例の網

 【徳之島】天城町教育委員会は4月30日付で、同町浅間湾屋洞窟「ウンブキ」の水中で発見・採取されていた日本初記録種の「ウンブキアナゴ」を、同町初の天然記念物に指定した。日本最大級の水中鍾乳洞に生息する日本初記録種に加え「新種の可能性」も強く、捕獲禁止など保護に町文化財保護条例の網をかぶせた。

 同町文化財指定は第35号目となり「天然記念物」指定は初。「ウンブキアナゴ」は2011年11月、同町在住の自然写真家山田文彦さん(54)が、リュウグウモエビ属の観察用トラップで偶然採集した。神奈川県立「生命の星・地球博物館」の瀬能宏専門学芸員や、三重大学付属水産研究所の日比野友亮さんら魚類専門家が数年をかけて詳細に調査した。

 共同論文(14年3月発表)で「日本初記録であると同時に、北限記録に」。さらには「本種は特殊な生息環境(アンキアライン・汽水域)に生息するがゆえに採取される個体数が著しく少なく、形態的知見にも乏しい」。そのうえで「日本初記録のイワアナゴ科の希種」と断定。新標準和名を発見地にちなんで「ウンブキアナゴ属・ウンブキアナゴ」と命名した。

 天城町教委では、初の天然記念物指定の理由について「日本からの初記録種であり、希種であるため、ホロタイプ(正基準・模式標本)以外に形態的情報がほとんどない(新種の可能性もある)などが判明、非常に貴重な生物と位置づけられる。アンキアライン洞窟の生態系を考察するうえでも重要」と強調する。

 「ウンブキ」は「日本最大級の水中鍾乳洞」としても2年前から全国に話題を提供。「ウンブキアナゴ」についてはそれ以前から、観光客や島外からのマニア層によるとみられる捕獲事例(トラップ設置)も確認しており、個体数の減少を懸念していた。