環境省沖縄奄美自然環境事務所奄美群島国立公園管理事務所(阿部愼太郎所長)は1日、国の特別天然記念物アマミノクロウサギの2022年の交通事故件数が9月末現在で奄美大島、徳之島とも過去最多件数を更新したと発表した。国道や県道を含む生活道路での事故が多発しており、通勤・通学などで夜間運転する際、十分注意するよう呼び掛けている。
同省では、希少な野生動物の生息に影響を及ぼす要因の把握や保護対策への活用のため、野生動物の死体の情報を収集、死体確認件数・死因内訳の整理など行っている。クロウサギについては22年に回収された死体の死因内訳(1月~9月末まで)を集計した。
それにより死因が交通事故は奄美大島68件・徳之島21件、イヌネコ奄美大島14件・徳之島11件、不明・その他奄美大島37件・徳之島16件の計奄美大島119件・徳之島48件。最も多かった交通事故の確認件数は両島共すべて死体で、両島共に過去最多の昨年(奄美大島60件、徳之島17件)の件数を9月末段階で上回った。
奄美大島ではこれまでの事故多発道路上で、徳之島ではクロウサギ分布の辺縁部での事故が増加。今年、事故の増加が顕著に多い車道は、奄美大島=国道58号(県道85号線との分岐点)、瀬戸内町道網野子峠線、宇検村と瀬戸内町をつなぐ県道85号線、湯湾岳周辺の林道、県道612号線(役勝~薩川間)、大和村・宇検村の県道79号線▽徳之島=県道629号線(手々~金見間)―などを挙げている。
交通事故は林道だけでなく、スピードの出やすい国道・県道上でも発生。交通事故が多発している地点には、警戒標識などが設置されていることから、環境省は動物が活動する夜間は、特に警戒標識設置場所では注意し、野生動物が急に飛び出してきてもすぐに止まれる速度まで減速するよう求めている。阿部所長は「マングースの駆除によりアマミノクロウサギが増えている中、多くの事故死はとても残念。冬場は事故が起きやすいだけに、これ以上数が伸びることがないよう夜間の運転に注意していただきたい」と語り、事故死数の増加は通行車両が多く情報提供も多い生活道路での多発が関係しているという。阿部所長は「夜間の運転では急な飛び出しがあってもよけることができるスピードを」と指摘する。
環境省奄美野生生物保護センター(電話0997・55・8620)、同徳之島管理官事務所(0997・85・2919)ではアマミノクロウサギなど希少種の死体情報を集めている。傷ついたり、死んでいる個体を見つけたら連絡を。