「ユラ、メラ」の掛け声とともに南側に倒れた片屋根(9日午前6時40分過ぎ、龍郷町秋名)
雨の晴れ間に行われた「平瀬マンカイ」(9日午後4時過ぎ、龍郷町秋名の海岸)
国の重要無形民俗文化財に指定され、旧暦8月初丙(ひのえ)に開かれる龍郷町秋名・幾里集落のアラセツ(新節)行事「ショチョガマ」と「平瀬マンカイ」が9日、集落の山腹と海岸で開催された。雲が立ち込め時折雨が降るあいにくの天候にもかかわらず、明け方に行われたショチョガマには地元住民や観光客が多数訪れ、伝統行事を見守った。
祭りは13~17世紀、奄美群島が首里王府の統治下にあった頃から行われていたと伝えられる。戦中戦後に途絶えたものを、1960年に保存会が発足し復活させた。85年には国の重要無形民俗文化財に指定された。
山や田の神に豊作を祈る「ショチョガマ」は午前5時頃、山腹に立てられた片屋根の小屋に立つ男衆がチヂンをたたき、観衆に祭りをふれ始まった。神事を取り仕切るグジ役の窪田圭喜さん(83)が屋根に上がり、カシキ(赤飯)・ミキ・焼酎を捧げ、祭詞を唱えた。
やがて、片屋根に上がった男衆約100人が「ユラ、メラ」の掛け声に合わせ小屋を揺すり午前6時40分過ぎ、豊作の吉兆とされる南側に倒れた。祭場には拍手と歓声が沸き起こり、輪になって八月踊りが始まった。
片屋根を見下ろす崖の上から見守った窪田さんは、「無事終わり安堵(あんど)した。準備中は、神事で使われる縄の結び方を年長者が若い人に伝えるなど文化継承の流れができている。この役は次の世代に譲りたい」と大役を終える決意を口にした。
毎年参加しているという秋名小5年の重山圭吾君(11)は「怖かったので揺らさなかった。倒れる瞬間は体がはねたが、近くの大人が支えてくれた」と話した。4月に就任した松藤啓介大島支庁長も屋根に上がり、「祭りを体感できた」と満足そうに語った。
向かい合う二つの岩で歌を掛け合う「平瀬マンカイ」は、午後4時頃から秋名湾西側の海岸であった。
しめ縄の張られた「神平瀬」には、白装束に身を包んだノロ役の女性5人、「女童(メラベ)平瀬」には男性3人(ノロの補佐役、シドワキ・ウッカム・グージ)と女性4人が上がった。
女童平瀬で男女が輪になり踊り始めると、神平瀬のノロ役は岩に座り、海の彼方のネリヤカナヤに向かい豊作を祈願した。神事を終えると、海岸で八月踊りが披露され行事を終えた。