「ウンブキ水中鍾乳洞遺跡」で保護・活用指針を進達

天城町「ウンブキ水中鍾乳洞」内で確認された人類活動痕跡を示す土器(円内)=天城町提供

調査保存活用基本方針進達した池田榮史会長(左から3人目)=18日、天城町役場

世界的に類例ない希少遺跡
天城町

 【徳之島】「自然景観・考古学・生物学的に世界的にも類例のない希少な遺跡」――。天城町に対する「ウンブキ水中鍾乳洞遺跡調査保存活用基本方針」進達式が18日、同町であった。同遺跡調査保存協議会の池田榮史会長(69)=国学院大学研究開発推進機構教授=は、日本最大級の水中鍾乳洞、海面上昇前の人類活動痕跡の土器群、天然記念物(ウンブキアナゴ)の現状などからその世界的価値を強調。町は同資源の保護・活用や学術調査など課題解決を進め、国文化財指定を目指す。

 ウンブキ水中鍾乳洞遺跡は、同町浅間の同水中鍾乳洞内に所在。2018年9月に始めた同鍾乳洞内の形状調査などの際、調査中の水中探検家が入り口から約60㍍、水深約25㍍の地点で完全な状態に近い土器などの散乱を確認。町教育委員会が回収して分析を依頼した結果、同町西阿木名の「下原(したばる)遺跡」出土の「波状条線文土器」と同型。熱ルミネッセンス年代測定で「1万1700年~7400年前」の縄文時代(貝塚時代)の土器と分かった。

 町側は貴重な資源の同遺跡を適切に保存・活用するため、専門家と当局者ら構成する「ウンブキ水中鍾乳洞遺跡調査保存協議会」を23年4月末に設置。①ダイビングツーリズムなど観光への期待が大きい②遺跡の内容や本質的価値は未確定③暫定的な調査、保存、活用の基本方針の策定が望ましい―など観点から基本指針の協議を依頼。計4回協議会を開いてきた。

 会長の池田教授(元琉球大教授)は、伊仙町のカムィヤキ窯遺跡調査などにも携わり、最近は水中遺跡の「蒙古襲来沈没船の保存・活用」に関する学際研究でもおなじみ。ウンブキ水中鍾乳洞遺跡に関し、「かつて洞内では、何らかの人類活動がなされた可能性が高い。完新世(約1万年前以降)の海面上昇により、人類活動痕跡が水没したことが確認できる。世界的にも類例のない、非常に特殊で重要な水中鍾乳洞遺跡であることは明らか」とも強調する。

 課題には、町を主体とした▽埋蔵文化財銘面=土器群など遺跡の現状や内容の把握▽天然記念物面=形状や底面の土砂堆積(たいせき)状況等の把握▽同=ウンブキアナゴ(町指定)の生態把握の推進なども提案。基本方針に、①学術調査が不可欠②保護利用規則(ルール)の策定及び対象③保存活用の手法(モニタリングと評価)など確立の必要性も挙げた。

 一方、保存・活用方策で森田弘光町長ら当局側は、「あまぎ自然と伝統文化体験館」(26年3月完成予定)に水中鍾乳洞内を疑似体験できる空間(映像装置)を設置し、ユイの館(資料館)では教材を提供。26~28年度をめどに調査報告書を刊行。国の文化財指定について意見具申を行う方針も掲げている。