ザトウクジラ講演会

貴重な歯の標本を手にクイズなどを交えて楽しくその生態に迫る岡部さん

謎多い生態に迫る
奄美海洋生物研究会 美ら島財団・岡部さんが講話

 奄美海洋生物研究会(興克樹会長)は16日、奄美・沖縄のザトウクジラの調査・研究報告などを行う「ザトウクジラ講演会2018」を奄美市名瀬の奄美博物館で開いた。講師には一般財団法人沖縄美ら島財団総合研究センター・岡部晴菜さんを招き、テーマは「奄美・沖縄のザトウクジラ」。来場者45人は報告に耳を傾け、冬になると奄美・沖縄に回遊してくるザトウクジラの生態に迫った。

 会は環境省の「2018年度奄美群島国立公園奄美大島周辺海域における鯨類調査等業務事業」の一環で、同財団では長年ザトウクジラを研究。講演では、まだまだ謎の多いザトウクジラの生態解明に向けて、その調査成果などを紹介した。

 ザトウクジラの分布について岡部さんは、生息は北半球・南半球で二分し、北半球では高緯度で夏を過ごし、1~3月の冬に南下し繁殖期を迎えることを説明。出産・子育てについても、沖縄や小笠原、ハワイやメキシコなどの目撃例から「赤道に近い低緯度で行われ、繁殖期には群れる傾向もある」など報告した。

 エサについては観測から、沖縄周辺に回遊するクジラはロシア方面に移動し摂餌=せつじ=。群れで泡を使って魚を追い込むバブルネットフィーディングと呼ばれる狩猟方法なども映像で紹介した。

 岡部さんは調査結果を踏まえて「今後、奄美にしか回遊しないザトウクジラが増える可能性もある」とし、「そうなると奄美は(生態解明・観光資源としての)重要な地域になる」など見解も示した。

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 この日は、講演に先立ち、奄美での調査経過も興会長が報告。奄美で数日から3週間程度滞在するクジラの目撃例もあることから興会長は、「これまで例のない出産や交尾の観察が奄美でできる可能性もある」と報告した。