受取放棄で自然に放せず

島外へ持ち出しが図られた生きものたち(環境省提供写真)


環境省奄美群島国立公園管理事務所で一時預かりしているシリケンイモリ(準絶滅危惧種)

希少な生きもの捕獲 島外持ち出しも業者拒否
環境省「不幸な事態引き起こす」

 奄美大島の希少な生きものなどを捕獲し島外持ち出しが図られていたことが、16日までに分かった。業者に荷物を拒否された島外の訪問者は、返却された荷物の受け取りを放棄して島外に移動。生きものたちを一時預かりしている環境省奄美群島国立公園管理事務所は、「安易な生きもの持ち出しが不幸な事態を引き起こす」として警鐘を鳴らしている。

 同事務所によると今月14日、宅配業者から「生きものを島外に持ち出そうとした人がいた」などと連絡を受け持ち出しが図られた生きものを宅配業者の事務所で確認。洗濯ネットやプラスチックケースなど複数の容器に、アカマタ2匹、ヘリグロヒメトカゲ20匹、シリケンイモリ7匹、キノボリトカゲ1匹、アマミサソリモドキ1匹が生きたまま入っていたという。

 ケースには空気が通るように穴が開けられ、湿気を保つために苔を封入。持ち出そうとされた生きものは法律や条例で持ち出しは規制されていない一般種だが、IUCN(国際自然保護連合)や環境省の絶滅危惧種となっているものも。

 奄美群島国立公園の特別保護地区以外では、素手による生きものの捕獲採集は可能。国立公園内ではトラップ等の使用は許可が必要な規制がかかったエリアもあるが、区域外は規制がないので販売目的などの捕獲採集が相次いでいるという。

 同事務所の千葉康人世界自然遺産調整専門官は、生きものの持ち出しが未然に防げたことを評価するが、捕獲場所が不明で元の自然に放せず不幸になることを懸念する。「運び出せず受け取りも放棄されたら、自然に帰す手段を考えなければならない。ただ病気のまん延防止や、遺伝子かく乱などもあるので元の場所には戻せない。生きものが不幸になる場合もあるので、安易に持ち出しを考えないでもらいたい」と語った。詳細な捕獲場所が不明なため今回はやむを得ず、生きものたちは飼育希望する人に、引き取ってもらうように対応している。

 この他15日に、奄美署の連絡を受け、奄美市笠利町内で捕獲採集したヒメアマガエルやシリケンイモリの島外持ち出し未遂も発生。任意放棄された生きものは、持ち出しを図った人物の知人が採集場所に放したという。