世界初、未成魚での雄化成功

世界初、未成魚での雄化成功

短期間での雄化に成功したタマカイ=近畿大学水産研究所提供=

絶滅危惧種タマカイ 養殖技術の確立に前進
近大・奄美実験場

 ハタ科の魚としては世界最大級の「タマカイ」。完全養殖に取り組む、瀬戸内町花天の近畿大学水産研究所奄美実験場は17日、3歳未成魚での雄化に世界で初めて成功したと発表した。雄化する時期は通常では5年以上掛かるため、今回の成果は飼育期間が短縮され、養殖技術の発展につながると見られている。

 タマカイは主に熱帯域で生息し、成魚は1㍍を超える。東南アジアでは高級魚として珍重されるが、乱獲の影響で個体数が激減。現在、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストに絶滅危惧類として掲載されている。

 同研究所は2015年から、天然資源の保護などを目的に養殖のための成魚づくり(親魚養成)に着手。台湾から稚魚を取り寄せ、奄美実験場で研究を進めてきた。

 タマカイは雌雄同体で成長した雌が性転換して雄化する。そのタイミングは体重40~50㌔以上とされ、飼育期間の長さが課題となっていた。

 今回の実験によると、今年2月、約3~9㌔の未成魚に雄性化ホルモンを投入。性転換の期間短縮を図ったところ、6月に入り実験体から精液の排出を確認。天然物よりも早い段階での成熟化に成功したという。

 この成果を踏まえ、同研究所はタマカイの人工種苗生産技術を確立させ、2002年成功したクロマグロと同様、完全養殖の事業化を目指す方針だ。また高級魚クエ(雌)とタマカイとの交雑種「クエタマ」の生産技術を活用し、高級ハタ類の養殖に取り組むことも明らかにしている。

 奄美実験場長を兼務する升間主計所長(65)は奄美新聞の取材に対し、「奄美の暖かい海は魚にとって好環境。今回十分な成果が得られ、うれしく思う。クロマグロに続き、タマカイでも完全養殖化を果たしたい」と今後に意欲を見せた。