ミカンコミバエ説明会

11月に入っての集中的な誘殺を受けて県大島支庁が開いた説明会

果実から発生確認なし
11月に集中的誘殺要因  飛来考えられず、特定難しさ

 果実・果菜類の害虫ミカンコミバエが11月に入り、瀬戸内町の請島・加計呂麻島で集中的に誘殺(11地点で計16匹)されたのを受けて県大島支庁農林水産部農政普及課は21日、奄美市農業研究センターで奄美大島の果樹生産者代表などへの説明会を開いた。同じトラップ(わな)で複数の誘殺が確認されている点などから、周辺発生国から風に起因する飛来ではなく町内で発生の可能性が出ているが、これまでのところ果実から発生の確認はされていないことが報告された。

 JAあまみ大島事業本部の果樹部会組織の各市町村代表、関係行政機関・団体の担当者らが出席。主催者を代表し農林水産部の福留哲朗部長があいさつ、「台風シーズンを過ぎたにも関わらず11月に入り複数区でミカンコミバエの誘殺が確認された。地元の町の協力のもと、国や県は初動防除を実施しているが、奄美大島の果樹農業はこれから大切な時期に入る。関係者と現状の情報の共有へ説明会を開催することになった。今後もしっかりと対応していきたい」と述べた。

 同課の特殊病害虫係が誘殺状況等を説明。それによると、誘殺に伴う初動対応でトラップの増設・調査(加計呂麻島、請島)は、通常の定期調査は1カ月に2回だが、調査開始から2週間は週2回、3~8週間目は週1回、以後も3世代相当期間終了後まで2週間に1回続き、3世代相当期間は来年7月までとなる。寄主果実調査は現在のところ加計呂麻島・請島とも寄生はなく、引き続き両島とも19日に寄生有無を確認中(2回目)で来週、果実を切開し明確になる。

 防除ではテックス板設置に続いて請島では予防的にベイト剤を散布。オスのみ誘引のテックス板に対し、ベイト剤はオスもメスも誘引するのが特長。いずれも誘引剤と殺虫剤成分を含み防除効果が期待されている。

 寄主果実の除去は、計11匹と大半を占める誘殺が確認された請島の池地集落全域で実施。パパイア、庭木のかんきつ類、ミカンコミバエが最も好むグアバ(バンジロウ)など14種387・8㌔を除去し、袋詰めにして町有地がある奄美大島側の同町嘉鉄に移動、深さ2㍍で埋没処分した。 

 同課は果樹農家に対し、「(年内はポンカンや津之輝など)かんきつ類等の出荷時期を迎えるが、通常の栽培管理を徹底してほしい。ただし、摘果果実等はほ場に放置せず、早期に地中に埋めるか焼却処分を」と呼び掛けている。また、地域住民には特に好んで寄生するグアバの適正管理(使用しないグアバの伐採、せん定などの処分。落下果実の地中埋没や焼却)を求めている。

 出席者との質疑応答では、今回の集中的な誘殺の要因が取り上げられた。6~8月の誘殺は梅雨前線や台風の影響により台湾や中国南部など発生国からの飛び込み(飛来)が考えられるが、同課は「11月については国(農林水産省植物防疫所)の方も風向き等から飛来は考えられないとしている。こうした場合、マニュアルでは外国船の入船・漂流物・沖縄県の発生による影響を挙げているが、町や地元の聞き取りを行っても要因の特定は難しい状況にある」と説明した。

 このほか、意見として▽発生を未然に防ぐためにもテックス板防除を沖縄県のように定期的に年間通して実施を(鹿児島県は飛来を受けての対応で抑制できるという判断から、誘殺があった場合にテックス板防除)▽緊急防除時の寄生の状況からも最も好むのはグアバであり、ミカンコミバエではなく英名の「オリエンタルフルーツ・フライ(東洋の果実に寄生するハエ)」を使用すべき。ミカンがつくことで、かんきつへの風評被害を招く▽今回の説明会に国の植防(門司植物防疫所名瀬支所)が出席していないのが納得できず、疑問。農家の生の声を聞いてほしかった。防疫の最前線の機関であり残念でならない―などが挙がった。