言語・方言サミット奄美大島大会

基調講演を行った鹿児島純心女子短大の小川名誉教授

 

各地の方言の話者が登壇して日常会話などの聞き比べも実施

 

「かけうたの復活を」
方言の役割など理解深める
基調講演や聞き比べも

 

 奄美市は22日、同市名瀬のAiAiひろばで2019年度「危機的な状況にある言語・方言サミット(奄美大会)・奄美大島」の1日目を開いた。基調講演や各地の方言の聞き比べ、実演披露などを通して、参加者は方言の役割や価値などの理解を深めた。また協議のパネラーから言葉を伝えるために、唄が有用であるとの意見も出された。

 オープニングで、「大笠利わらぶぇ島唄クラブ」がシマ唄や子守唄など6曲を披露。開会で県文化スポーツ局の有木正悟局長と、朝山毅奄美市長があいさつした。

 基調講演を、鹿児島純心女子短期大学の小川学夫名誉教授が担当。「シマ唄とシマグチ~私の出会った言葉たち~」の演題で、これまで研究してきたシマ唄と方言の関連性などを解説した。

 小川さんは北海道北見市生まれ。早稲田大学在学中に奄美の唄に出会い、研究を決意し鹿児島に移住して唄の系譜を調べて来たという。

 シマ唄に関する言葉として、「うたあしび」「かけうた」「うたねんご」などを例示。小川さんは「奄美のシマ唄は、かけうたが中心。男女で行う唄問答が基本だが、今はなくなっている。方言はシマ唄があったから残ったと言える。今後残していくためには、かけうたを復活させるしかない」と語った。

 午後からは、危機的な状況にある言語・方言の聞き比べと称して北のアイヌ語から南は八重山(竹富島)の話者11人が登壇。自己紹介や日常会話などの例文を、各地の方言・言語で発表。参加者は配布資料の表記を確認しながら、各地の言葉を聴き込んだ。

 聞き比べ後に、別府大学の松本泰丈客員教授が奄美の発音などの特徴を解説。「発音は奄美大島と徳之島が似ており、喜界島、沖永良部島、与論島がそれらと違っている。喜界島の方言は抑揚がなだらかで、共通語の発音に近く『キャーヤマトグチ』とも言われる」。

 続いて民謡やシマ唄などの伝承に取り組んでいるパネラー4人が登壇し琉球大学の石原昌英教授の司会で「ウタを通して伝わることば」の題で協議。奄美からカサン唄・中村瑞希さんとヒギャ唄・前山真吾さんが出場し、二人からはシマ唄を伝えるのに言葉の発音や意味を正しく理解することが重要だとする意見も。中村さんは「ヒギャ唄に出会い衝撃を受けたが、残っていることに安堵もした。方言が周りにある環境で八月踊りなども体験することが、方言を学んでアイデンティティーの確立になるのでは」と話した。前山さんは「先輩たちから受け継いだ言葉(方言)で唄えるように努力している。唄は言葉を伝えるのに有用で、感覚を大事にしながら伝えていきたい」とした。

 休憩後にアイヌ語のコントや音楽、同化政策で一時消えたスウェーデンの先住民族サーメの伝統的歌謡ヨイク、八丈島のショメ節、沖縄民謡、奄美シマ唄の実演披露が行われた。

 きょう23日は奄美市名瀬の奄美文化センターで2日目のプログラムがあり、奄美での方言を残す取り組みなどの報告が行われる。