あまみならでは学舎第1回講座

「大島紬と島唄」の講演をする金井志人さん=奄美市名瀬=

 

 

「染色は色の錬金術」
金井工芸・金井さん講師
奄美図書館

 

 

 県立奄美図書館(日髙京美館長)は15日、「あまみならでは学舎」の第1回講座を開講した。講師は金井工芸(染色家)の金井志人=ゆきひと=さん(41)、演題は「大島紬と島唄」。64人が参加し、金井さんの個性的な作品と講演を楽しむ様子が見られた。

 金井さんは龍郷町戸口出身。幼い頃から父の工房「金井工芸」で遊んでいたという。当初泥染めに興味はなく、上京してからは音響関係の職に就いた。25歳で帰島した時も「軽くかじってみよう」という気持ちで泥染めを始めたという。しかし、いざ泥染めの工程に触れてみると、大好きな音楽との共通点をいくつも感じた。「植物から色を抽出して他の物を染める作業が『色の錬金術』に思えてあっという間に魅了された」と金井さんは目を輝かせた。

 金井さんが泥染めに携わり始めた頃は、ちょうど元ちとせさんが世に出たタイミング。シマ唄の要素を生かしつつ、今の時代に合わせた音楽を届ける元ちとせさんの姿に感銘を受けた金井さんは「大島紬でも幅や可能性を広げ、表現してみたい」と一念発起。国内外で展示会やワークショップを開催し、様々なクリエイターとコラボし作品を世に輩出した。サンゴ・砂・山羊の頭蓋骨などあらゆるものを染め、「色」に向き合い続けた。そして「モノはコトで出来ている」という結論にたどり着いた。

 「『モノ』が大島紬で『コト』がその背景や歴史。時代が変われば『モノ』も『コト』も変わる。『コト』を後世に残すことができれば、『モノ』の形が違っても本質は残る」と、文化的背景を礎とした、新しい大島紬の形を提案した。

 同講座に参加していた元治富子さん(69)は「あまり知られていないけれど、大島紬は山や川だけじゃなく、海の恵みも受けてこれだけ発展した。世界自然遺産と一緒ね」と笑みを浮かべた。祖母と母が大島紬の織工だったという福永美智子さん(69)は「母が紬を織ってくれたおかげで学校を出ることができた。だから、大島紬についてよく知りたいと思って講座に参加した」と家族への感謝を語った。二人とも次世代を担う染色家の活躍を楽しみにしており、期待を寄せているとのこと。

 あまみならでは学舎の第2回目の講座は6月12日午後2時開講予定。演題は「鶏飯のルーツ」、講師は奄美長寿食文化研究家の久留ひろみさん。同講座の予約は5月29日から。