国天然記念物オカヤドカリ

異例の約1カ月遅れでピークに。オカヤドカリの大群による種の保存・生命誕生のドラマ=29日午後9時すぎ、徳之島町金見崎海岸

異例、ピーク1カ月遅れ徳之島町金見崎海岸
種保存・生命誕生のドラマ

 【徳之島】徳之島町の東北端に位置する金見崎(かなみざき)海岸では29日夜、国指定天然記念物「オカヤドカリ」の大群による種の保存・生命誕生のドラマがようやくピークを迎えていた。悠久の自然界のリズムに沿って密かに繰り広げられる同海岸の名物だが、ピークが約1カ月遅れるのは異例という。

 絶好の同観察ポイントは、金見崎海岸(奄美群島国立公園第3種特別地域)の通称「真崎(まさき)浜」の一角。大きな河川もなく生活排水や畑地開発に伴う赤土流出汚染などにもほぼ無縁。無垢(く)の美しい海浜環境が保全され、「世界自然遺産の島」の海岸部を構成する自慢のエリアの一つでもある。

 名物の生命誕生ドラマのピーク予想が不発に終わり、住民の情報で約1カ月ぶり再訪したのは29日午後9時すぎ(潮汐は中潮・満潮時間帯)のこと。砂浜から足元の悪い岩礁を踏み越えてみると、岩場と砂上の一角は、オカヤドカリの大群が〝密集・密接〟状態で覆いつくしていた。

 「ザワザワ、カチカチ」。大群が岩を這いずって宿貝(貝殻)を接触させうごめき合う音に潮騒が交錯。その一部は潮だまりに達し、宿貝と体の間でふ化させた「ゾエア」と呼ばれる幼生を、体を揺らしながら放出。その瞬間、赤紫色の無数の幼生(1~2㍉)が小エビやボウフラ状に泳ぐ姿は肉眼でも確認できた。

 例年、梅雨明け前後に始まり、6月下旬ごろの「大潮の満潮、無風状態の熱帯夜」など条件合致時がピークに。地元出身で長年、保護・観察を続けている民宿金見荘の寿山秋男さん(78)は「私の知る限り約1カ月もピークが遅れるのは初めて。長い梅雨の後に、雨が多かったことも影響したのでは」と推測。

 世界自然遺産登録による注目度と相まって予想される観察者増には、「オカヤドカリは臆病もの。大声を出したりせずに静かに見守って欲しい。ヤドカリたちの『衣食住(貝殻・アダンの実・海岸の自然環境)』も守って欲しい」など対策も訴えた。