精神障がい者の雇用促進期待

来月、改正法施行 名瀬職安管内 有効求職者で増加傾向
状態「伝えることできる職場環境を」

 すべての企業を対象に、雇用の分野で障がい者への差別を禁止する改正障害者雇用促進法(障害者の雇用の促進等に関する法律)が来月1日施行する。名瀬職安(片平道博所長)管内では、登録している障がい者の中で就職を希望する有効求職者では精神障がい者の数が増える傾向にある中、改正法により雇用促進を期待。労働力としての確保には、状態が伝えられるなど相談できる職場環境へ事業所側の理解がポイントになりそうだ。

 今回の改正法では障がい者への差別禁止を打ち出しているが、具体的には募集・採用時の場合、「身体障がい、知的障がい、精神障がい、車いすの利用、人工呼吸器の使用などを理由として採用の拒否」を、禁止している差別として挙げている。

 同職安管内の障がい者職業紹介状況をみると、身体障がい者の雇用は進んでいる一方で、精神障がい者の就労促進が課題。今年2月末現在459人の障がい者が登録、有効求職者が241人存在する。このうち精神の登録は126人、有効求職者は90人。最も多い身体(223人登録、有効求職者100人)より下回るものの、知的(96人登録、有効求職者45人)を上回り、精神の就職希望者は増加傾向にあるという。

 障がい者雇用について片平所長は「少子高齢化が急速に進む中で県内企業でも人材確保に苦労するところが出ている。労働者全体に占める障がい者の割合は概ね10人に1人となっており、企業が障がい者を積極的に雇用することは労働力の確保・活用につながる」と指摘する。

 名瀬職安では今回の法改正も捉え精神障がい者の雇用促進に取り組んでいるが、担当する上野満亮統括職業指導官は「精神障がいの方が就労していく上で、状態を事業所側にうまく伝えることができるかが鍵になる。職業紹介後の面接で状態を十分に伝えることができず、そのため就職後に服薬をためらい状態が悪化し、離職してしまうケースがある。きちんと体調を管理すれば状態は安定するだけに、事業所側の理解のもと状態を伝えることができるよう関係機関と連携しながら進めていきたい」と語る。

 職安が受け入れる事業所側に求めているのが、カウンセリングなど相談体制の構築のほか、体調の変化などへの気遣いだ。改正労働安全衛生法の施行(昨年12月)で企業にストレスチェックが義務づけられるなど職場のメンタルヘルス対策は強化しなければならない事項。背景にあるのが、うつ病など精神的不調を訴える労働者の増加がある、精神障がい者の雇用により事業者側が改善に取り組むことで職場環境の向上が期待される。

 名瀬職安と連携して障がい者の就労や生活支援に取り組んでいる機関がある。社会福祉法人三環舎が運営するあまみ障害者就業・生活支援センター(向井扶美所長)で、同センターの中村悠美子主任就業支援員は「精神障がいの方がご本人の状態を開示するか、非開示するかは本人の意思を尊重しなければならないが、非開示の場合、短期での離職につながっている。力がある方が多いだけに、支援を活用することで長く働き続ける定着のメリットを本人に伝え、事業者側の理解の働きかけや不安の軽減などのサポートを行うことで、就労の安定へ両者の仲介に努めていきたい」と語った。

 なお、改正法では差別禁止のほか、合理的配慮の提供義務を掲げている。▽募集・採用時で均等な機会を確保するための措置▽採用後においては均等な待遇の確保または障がい者の能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するための措置―で、車いすを使っている人のために机の高さを調節したり、聴覚障がい者のために会議などで手話通訳を手配するが「合理的配慮」の例としてある。