友情を深めながら回を重ねる「南の3人展」の主役。左から犬童さん、井上さん、日置さん=東京都中央区銀座の井上画廊にて
【東京】絵画のテーマは、「奄美の自然と未来への希望」。東京・中央区銀座の「井上画廊」で「南の3人展」と題したグループ展が4日から9日まで開催されている。多くの人たちが訪れ興味深そうに絵に見入っていた。参加したのは、鹿児島市在住の犬童二郎さん(垂水高校・非常勤美術講師)、日置誠さん(鹿児島高校教諭)と、井上伸久さんの3人。
井上さんは奄美大島出身で、奄美高校の美術教諭。同校では8年間教壇に立ち、定年後、再任用されて3年目。中学1年のときに、盲腸で入院した井上さんは、退院祝いに絵具をもらったことをきっかけに、絵に目覚め、高校1年からデッサンを開始。「エビハラ・ブルー」で世界的に知られる、鹿児島出身の洋画家・海老原喜之助に憧れ、多摩美術大学へ進学した。やがて、一生絵に携わっていける職業・教師となり、県内の鹿児島東高校などを経て、奄美高校に赴任した。
井上さんの絵には、人物が光を感じたり、森の中で耳を澄ましたりと奄美の自然が表現されている。よく見ると人物のシャツには、奄美の海の波が幾重も表現されていたりする。「絵の背景には、奄美の豊かな自然と、それに育まれた人たちがあります。また、”明日への兆し”という作品には、手前に自然を配し、人物の奥には対照的に都会的な風景を描きました。それには、若者たちにもっと夢を持ってほしいとの願いも込めたものなんです」と、井上さんは解説する。
震災などが多いせいか、最近の高校生たちは堅実すぎると、教師の立場で実感しているようだ。「南の3人展」は今回で14回目。先輩に「東京でやってこその意味がある」と激励を受け、ほぼ同年代の3人で同じ場所で友情を深めながら 回を重ねてきた。3人は、近代美術史に輝く画家を数多く輩出してきた「独立展」の準会員。井上さんは、30歳でいきなり入選。依頼、仕事の合間をぬって1年間かけて100号を超える3作品を仕上げ、32回出展している。「雨、ヒカゲヘゴ・・・奄美の独特な自然と人々たちをキャンバスにたたきつけて、独立賞をもらうのが私の夢ですね」と、井上さんは目を輝かせる。今回の作品は、六本木の国立新美術館で10月12日から開催される「84th独立展」に出品される。