熟しているグアバの果実が放置された状態にある菜園。ミカンコミバエが飛来するリスクとなっている
果実や果菜類の害虫・ミカンコミバエは、沖縄では周辺発生国からの「飛び込み」とみられる誘殺の確認が続いている。奄美でも警戒が欠かせないが、地域住民の取り組みで求められるのが各家庭の菜園や自生している寄主植物の除去だ。7月14日に緊急防除が解除された奄美大島ではミカンコミバエが好む「好適寄主植物」の一つグアバ(バンジロウ)の果実で早くも熟したものが確認されており、関係機関は寄生を防ぐ適切な管理を呼び掛けている。
農林水産省植物防疫所がホームページで公開しているミカンコミバエ種群の誘殺状況をみると、奄美群島の市町村は引き続き誘殺ゼロが続いているが、沖縄県の場合、7月26日~8月1日1匹(石垣市)、8月2~8日2匹(石垣市、八重山郡竹富町で各1匹)、8月9~15日ゼロ、8月16~22日2匹(宮古島市)とゼロの週もあるものの、誘殺が確認されている。ただ、いずれの地域も連続ではなく散発的な誘殺のため、主に風に起因する飛来による「飛び込み」の可能性がある。
この「飛び込み」のリスクは奄美でも警戒が必要。大量に飛来すると、オスとメスの交尾により世代交代(発生)につながるため。昨年のトラップ(捕集器)による奄美大島での誘殺では、最初に確認されたのは6月30日だが、9月中旬以降に誘殺数が増加している。グアバの果実の中に幼虫がいる寄生果の確認が象徴するように、熟したグアバへの飛来が誘殺増を招いたとみられている。
グアバの果実が熟するのは秋口だが、大玉果など品種によっては既に果実が黄色に熟しているものも。奄美大島北部の集落内にある菜園では、熟したままの大玉の果実が放置され、多量の果実が地面に落下している様子が確認された。
県大島支庁農林水産部の東洋行部長は「樹上で熟している果実にメスが寄生する可能性がある。沖縄の先島諸島では今月に入りミカンコミバエの誘殺が確認されているだけに、奄美でも飛来に警戒しなければならない。寄生による発生というリスクを防ぐためにも寄主植物の適切な管理をお願いしたい」と指摘。グアバの果実を食しない「不要な果実」については、早期に果実を摘み取り廃棄する取り組みを関係機関など通しあらためて地域住民に啓発していくという。
緊急防除解除後の防除対策は、沖縄のように「飛び込み」などによる誘殺が確認されない限り、テックス板は再配置されない。トラップの配置による侵入警戒体制の強化に力点が置かれている。
地域住民と連携した平時の対応では、①ミカンコミバエの寄主植物を把握し事前に除去するため、▽各市町村が寄主植物の植栽地図を作成▽県が電子データとして取りまとめ②植物防疫所が作成した採果カレンダー等を、市町村を通じ地元住民へ提供③国、県、市町村は平時から緊密に連携、誘殺にかかわる情報等を速やかに地元住民に提供―を打ち出している。解除後も再び発生を繰り返さないためには、住民の関心が鍵を握りそう。
(徳島一蔵)