苦難乗り越え「奄美タンカン」復活

2年ぶりの島外出荷に向けて、笑顔ではさみ入れを行ったタンカンの生産者

瀬戸内町ではさみ入れ、JA共販190㌧見込む

 2016年度産の奄美たんかんのはさみ入れ式(JAあまみ大島事業本部主催)が1日、瀬戸内町阿木名のタンカン農園であった。ミカンコミバエ種群発生による果実の全量廃棄などの苦難を乗り越え、奄美大島(笠利一部地区を除く)では2年ぶりの島外出荷に向けた収穫がスタート。今期産は台風被害等も少なく例年以上の豊作が予想され、JA取扱目標も一昨年の2倍以上に当たる192㌧を見込む。出席した関係者らは“奄美たんかん復活”の狼煙となるシーズンの幕開けを喜んだ。

 式は同町の武富光則さん(59)の農園であり、生産者や関係団体、行政など関係者約50人が出席した。

 JAあまみ生産部会連絡協議会果樹部会の岡山俊一会長は「昨期はミカンコミバエ発生に伴い(果実の)廃棄という形だったが、今期、はさみ入れ式を迎えられて非常に喜ばしい。これもひとえに生産者、行政など関係者が早期根絶に向けて取り組んだおかげ。はさみ入れ式を機に日本全国のファンに奄美のタンカンを届けたい」などとあいさつ。

 同農園の武富さんは「昨年は丹精込めて作ったタンカンを捨てなければならない事態となり最悪な年だった。今年は(移動制限が)解除され、シーズンを迎えたことへの喜びもひとしお」と感慨深く語り、「昨年送れなかった分、お客様も期待して待っているはず。その期待に応えられるタンカンをお届けしたい」と張り切っていた。

 一昨年に奄美大島で36年ぶりに果実や果菜類の重要病害虫・ミカンコミバエの発生が確認され、同年12月から植物防疫法に基づく緊急防除に関する省令が施行され、タンカンなど寄主植物の移動規制が行われた。緊急防除の解除は当初、今年度末とされていたが、果実の全量廃棄など徹底した防除作業により昨年7月14日に解除され、今期産のタンカン出荷が可能となった。

 関係者によると、今期産は台風被害など自然災害や鳥獣被害なども少なかったほか、昨年度に果実を廃棄する際、早取りを行ったことから樹勢の回復も良く平年以上の豊作が見込まれている。

 JAによると今期の共販取扱目標は192㌧。㌔当たり単価420円。金額は約8千万円を見込む。選果場への受け入れは3日から開始。例年同様、集荷日が設定され、月・水・金は共販(JA)、火・木・土は委託(個人)選果となる。